【from Editor】
福島県相馬市の中心部から車で15分足らずの所にある相馬中核工業団地西地区。広大な敷地に約1千戸の仮設住宅が立ち並び、相馬市、南相馬市、浪江町、飯舘村の住民が避難生活を送っている。飯舘村の仮設住宅は164戸、約350人が入居している。ただ、先月訪問した際に見かけた子供はわずか1人、大半が高齢者だ。若年層や子供のいる家庭は仕事や学校の関係で福島市などに移転。このため、同居していた高齢者が仮設住宅に入居する傾向にあるという。この状況は、他の自治体でも見受けられる。“限界集落化”する仮設住宅では高齢者の「孤立」防止が課題となっているのだ。
仮設住宅での孤独死が問題化した阪神大震災を教訓として、自治体の多くがコミュニティー形成を重視した対応を取っている。
飯舘村では、県内の仮設住宅を生活支援相談員や健康相談員が定期的に巡回している。また市街地から離れている場所では、買い物バスを運行させているケースもあり、きめ細かい高齢者支援を行っている。
同県会津若松市には原発事故で警戒区域に指定された大熊町が移転している。市内の仮設住宅(建設戸数約880)への入居は、行政区単位で割り振り、コミュニティーの維持を図っている。
また要介護の高齢者ら向けのサポート拠点が、松長近隣公園仮設住宅の一角に先月開所。デイサービスや生活支援サービスを行うという。同敷地内には仮設店舗も建設中だ。
避難生活が長引くと、閉じこもりがちになる高齢者が増えてくるだろう。多くの仮設住宅では、ボランティアも含め、さまざまな「孤立」防止に取り組んでいる。
一方、仮設住宅の家賃は無料ながら光熱費などは自己負担となり、避難所で提供されていた食事や生活物資の配給は打ち切られる。このため、仮設住宅への入居は「自立の第一歩」ともいわれる。が、仕事もなく、不安定な生活が続く入居者のなかには「家はできたものの、家計は変わらない」と漏らす人も数多くいるという。「入居=自立」といわれても…というのが本音だろう。
震災から7カ月。避難生活が日常化し、心身ともに疲れ切った入居者たち。沿岸部から豪雪地帯の会津若松市に移転した大熊町の人たちは、経験したことのないだろう、雪下ろしも必要になる。「孤立」と「自立」の問題を抱えたまま、厳しい冬を迎える。(地方部長 楠崎正人)