【外信コラム】北京春秋
「民営企業の里」と称された浙江省温州市を中心に高利貸事件が激増している。人件費高騰などで苦境に陥った企業経営者が高利貸から借金したり、自ら業界参入したりして破綻(はたん)。夜逃げや自殺に追い込まれる事件が頻発している。
中国メディアは連日この問題を大きく報道しているが、中でも驚かされたのは「高利貸の最大スポンサーは地元の高級公務員」(21世紀経済報道紙など)との指摘だ。
各紙報道によると、温州市の順吉集団という高利貸業者が2年前に集めた13億元(約160億円)の資金とともに先月末失踪、数日後に捕まった。
ところが容疑者は巨額資金の行方について口を閉ざし、困ったことに出資者からの被害届もない。
温州市の業界関係者によると「13億元の8割は地元の高級公務員が出資した」とみられている。被害届を出せば、「公僕が高利貸と結託して暴利をむさぼっていた」事実が明るみに出るから、だんまりを決め込んでいるわけだ。
同様の事例はあまたあり、「官銀(役人の資金)」との通称さえある。不動産開発事業などの許認可権を握る役人と高利貸が結託すれば、年率100%を超える暴利も珍しくないそうだ。役人の腐敗はまさにとどまるところを知らない。
(山本勲)