【主張】大阪の教育条例
橋下徹大阪府知事が代表を務める地域政党「大阪維新の会」が府議会に教育基本条例案を提出したのに対し、府教育委員側が撤回を求めて対立している。
条例案は教育に関する知事の責任を明確にし、職務命令に従わない教師の免職規定や全国学力テストの学校別結果公表なども盛り込まれた。
教育委員らは「これまでの成果が失われる」と反対しているが、そもそも問題教師を毅然(きぜん)として処分せず、成果や責任が問われないなど、当たり前のことが行われてこなかったことが問題だ。教育界の悪弊を改める意義は大きく、実効ある結果につなげてほしい。
大阪府では入学式や卒業式の国歌斉唱で教職員に起立斉唱を義務づける条例が既に制定され、今回の条例案はこれに続くものだ。
新たに「政治が適切に教育行政の役割を果たす」などと知事の責務を規定し、例えば知事は府教委と協議して府立高校の教育目標を設定する。教育委員が目標を実現する責務を果たさなければ議会の同意で罷免できるなどだ。
不起立教師らが「同一の職務命令に3回違反した場合に免職」とする規定なども定めている。
教育委員らはこれらに「教育への政治介入」などと反発し、条例が成立すれば「総辞職しかない」との声もある。しかし、地域の教育の質を高めるために、選挙で選ばれた首長が恣意(しい)的にではなく、民意を適切に反映して責任を持つのは当然のことだ。「介入」との批判はあたらない。
教育委員会の組織、運営に中立性が求められるのは、一部教職員組合などの不当な要求に左右されずに教育行政を進めるためだ。
ところが、教委はその責務を果たしていない。過去に国旗、国歌の指導をめぐり校長が自殺した広島県の問題や、山梨県教職員組合の違法な政治活動では教委と組合の癒着などの関係が批判された。いじめ問題で教委が事実を隠すなど、事なかれ体質が厳しく問われたこともある。
教委は学力テストの学校別の成績公表に消極的だ。人事評価で最低評価が2回続いた教師への分限処分にも反対している。
橋下知事は教育委員側に対案を求めた。評価を嫌い、責任を曖昧にする教育界の体質が公教育不信を招いた責任を教委も認識し、正面から向き合ってもらいたい。