手っ取り早い“サイバー泥棒” | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【40×40】河添恵子




三菱重工へのサイバー攻撃。ウイルスの中に「トロイの木馬」が含まれていたこと、ウイルスに感染したサーバーからの情報の流出先の一つが中国であること、ウイルスに感染したサーバーやパソコンを攻撃者が遠隔操作する画面に中国語(簡体字)が使われていたことなどが判明している。限りなく“黒”い。

 このスパイウエア「トロイの木馬」で思い出したのは、イギリス情報局保安部(MI5)が「中国スパイの脅威」と題した文書を作成し、防衛・エネルギー・通信関連の企業が主な標的となっていることを警告、企業幹部らに配布したという昨年の報道だ。人民解放軍や公安関係者が展示会や交易会に乗り込み、狙ったビジネスマンに接近、「トロイの木馬」を仕掛けたデジカメなどの“贈り物”をしていたという。なかなか大胆な手口だ。

 ドイツでも「人民解放軍と関係あるとみられるハッカーが、ドイツ政府のシステムにトロイの木馬を感染させた」と“中国サイバー戦士”の存在を暴いたり、ドイツ連邦憲法擁護庁の職員の話として「中国は2005年以来、ドイツ企業に対し産業スパイ活動を続けており、ドイツにいる産業スパイの60%は中国人」と報道するなど、度重なる中国の泥棒&破壊行為に警戒心をあらわにしている。

 また、ダライ・ラマのチベット亡命政府から依頼を受けたカナダの研究グループは、中国から発信された「トロイの木馬」が亡命政府のパソコンに侵入し、情報を窃取していたことを公にしている。

 軍事機密や最先端技術をノドから手が出るほど欲しがっている中国、カネを積んでも買えないものは“サイバー泥棒”が手っ取り早いってことらしい。

 中国政府がサイバー攻撃全てに関与しているかは「NO」だとしても、有能なハッカーはヘッドハンティングされるだろう。なぜならサイバー攻撃の精度&破壊力のアップが、核兵器や生物兵器と並ぶ新兵器になると考えているからだ。宣戦布告なき戦い-その火蓋が切られている。


                               (ノンフィクション作家)