【主張】エネルギー計画
日本のエネルギー政策の中長期的な指針となる「エネルギー基本計画」の見直しに、3日から経済産業省が着手する。
東京電力福島第1原発事故を受け、原子力発電の目標を引き下げる方針だが、まずは国を支える電力の安定供給のための具体策をはっきり示してほしい。
それには、安易な「脱原発」は許されない。野田佳彦政権は原発再稼働や安全性をより高めた原発開発を含め、総合的なエネルギー政策を打ち出す責務がある。
昨年6月に決定した現行の基本計画は、2009年度に約30%だった原子力発電の比率を原発14基の新設によって、30年には50%超に高める目標を掲げた。しかし、事故のため白紙撤回し、来年半ばまでに全面的に見直す。
日本がいま直面するエネルギー問題とは、原発の再稼働が果たせていない中での電力不足の解消である。今夏は東日本で使用制限を発動し何とか乗り切ったが、来夏の電力供給見通しを示すことはできていない。
電力不足を放置することは、産業の空洞化に拍車をかけることにもつながる。日本経済の弱体化はさらに進んでしまう。
国内にある全54基の原発のうち、現在稼働しているのは11基にとどまり、再稼働がなければ来春にはゼロとなる。それだと来夏には全国平均で9%、原発利用度の高い関西電力では20%近い電力不足に陥ると試算されている。
このように原発再稼働は喫緊の課題である。基本計画では再稼働の必要性を政府として共有し、具体的な道筋を示す必要がある。
その点、問題なのは基本計画を策定する経産省総合資源エネルギー調査会のメンバーが大きく変更され、原発に反対する委員が大幅に増やされたことだ。
枝野幸男経済産業相は「バランスの取れた議論ができるよう選んだ」と説明するが、安定供給の見通しもないまま「脱原発」の風潮に流されてしまう恐れはないのか。国益などの高い視点に立った、冷静な議論を求めたい。
一方、日本は火力発電の増強のため、原油や天然ガスの輸入を増やしている。燃料費の増加は年間3兆円以上と見込まれる。例えば、韓国では輸入元の一元化などで価格を引き下げる工夫をしている。日本も安定的かつコスト減の対策を実行すべきである。