韓国、続く「過去刷り直し」 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【緯度経度】ソウル・黒田勝弘




日本統治時代の1920年代にできた旧ソウル駅の駅舎が文化財として保存された話はすでにコラム「ソウルからヨボセヨ」で紹介した。隣に現代建築そのものといった感じのガラス張りの新駅舎がドーンとできているため、それほど目立たなくなったが、中央に丸いドームのあるルネサンス風のレンガ造りはやはり風情がある。

 ソウルの旧市街は近年、都市再開発が進み、古い建物や路地裏が急速になくなりつつある。オールドウオッチャーには寂しい。今風のキラキラしたオフィスビルや高層マンションのなかで、旧ソウル駅舎のような建物を見るとどこかホッとする。

 ところがその旧ソウル駅舎を見に出かけた日本人は実はギョッとする。いや、韓国人でもいささか驚く。

 駅前の広場に建っている抗日独立運動家・姜宇奎(1855~1920年)の記念像がすごいからだ。

 この人物は1919年、旧南大門駅で日本の斎藤実・朝鮮総督暗殺を狙って爆弾を投げたことで知られる。暗殺は成功しなかったが韓国では“義挙”として歴史に刻まれている。韓国人にとっては歴史的人物ということで今回、その顕彰団体が記念像を駅前に建てたのだ。

 しかし記念像は台座を含め4、5メートルもあるでっかいもので、しかも手に握りしめた手榴弾(しゅりゅうだん)をまさに投げようとしている躍動感(?)に満ちたものだ。

「それが支配された側の民族感情だ」といわれればそれまでだが、いかにも大胆な発想である。明るく楽しいいわゆる“韓流ブーム”の一方で、韓国内では依然(?)、こうした“過去刷り直し”が行われているのだ。

 在ソウル日本大使館前の路上に慰安婦記念像を建てるという話もそうだ。日本大使館前にこれみよがしに“反日記念像”などというのは前代未聞だろう。

 慰安婦記念像は、旧日本軍相手に慰安婦をしていたという老女たちに対し日本の国家としての「謝罪と補償」を要求する支援団体が計画しているものだが、道路管理の地元当局は認める方向という。

 こういうのは外交問題にならないのだろうか。

 韓国当局は米国大使館前での反米デモは厳しく規制・排除するが、日本大使館前での反日デモにはなぜか規制が緩い。

 慰安婦問題の支援団体は、大使館前の「水曜デモ」がこの年末で1千回になると誇り、記念像はこの1千回を記念して建てるというのだ。

 今や元慰安婦の老女たちは抗日独立運動家並みの扱いになっている。彼女らも高齢化で亡くなるケースが増えているが、その死亡はマスコミによって必ず顔写真付きで報道される。

 そしてこの夏、これまで亡くなった彼女たちの胸像が完成したとマスコミで大きく紹介されていた。

 慰安婦問題は韓国ではある種の“聖域”になってしまっている。日本が大使館前の記念像計画を阻止できるかどうか、日韓関係の現状を知る試金石である。