日本人拉致の総括役、金賢姫元死刑囚の選抜面接…
昭和55年の原敕晁(ただあき)さん=当時(43)=の拉致事件当時、北朝鮮の対外情報調査部のナンバー2だった姜海龍(カンヘリョン)元副部長は80歳代半ばで現在、北朝鮮で暮らしているとみられる。日本人拉致の複数チームの総括役だったとみられ、韓国人の映画監督と女優の夫妻の拉致や、大韓航空機爆破事件の実行犯、金賢姫(キムヒョンヒ)元死刑囚の選抜面接にも関与した疑いがあり、韓国治安当局筋からは“闇の元締”とみられていた。
1978(昭和53)年、夫で映画監督の申相玉(シンサンオク)さんとともに香港で拉致された韓国の女優、崔銀姫(チェウンヒ)さんの証言によれば、北朝鮮に拉致された直後、崔さんの監視や思想教育の総括を担当したのが姜元副部長だったという。
金正日総書記の信任も厚く、韓国治安機関は「夫妻の拉致は、映画マニアで崔さんのファンだった金総書記が強く願望し、姜元副部長が直接指揮した犯行」と指摘している。
87年11月の大韓航空機爆破事件の実行犯で、80年当時に同部工作員の候補生だった金賢姫元死刑囚は著書の中で自身の選抜面接官だったのが姜元副部長だったと記している。拉致被害者の蓮池薫さん(54)も姜元副部長について、工作機関の関連施設で「面識があった」と警察当局に証言したことが分かっている。
一方、姜元副部長がトップまで務めた対外情報調査部は金総書記直轄の工作機関で、現在は35号室と呼ばれる。日本人拉致事件関連では蓮池さん夫妻を拉致した実行犯として国際手配されたチェ・スンチョルら6容疑者が所属していたことが判明。ほかにも数々の違法工作を展開し韓国、日本のほか、米国や東南アジア各国などを対象として拉致や破壊活動、情報収集などを行っているという。
韓国治安機関筋は「金正日体制を維持するための特殊工作を企画、実行する。総書記直轄案件の実現は最優先の課題とされ、権限は強大だ」と指摘する。
原敕晁さん