【風を読む】論説委員・松村雅之
人気タレント、島田紳助さんの芸能界からの突然の引退表明は、以前から指摘されていた暴力団と芸能人との深い結びつきの一端を改めて浮き彫りにした。
紳助さんと暴力団関係者の黒い交際は、警察関係者の間ではほぼ周知の事実だったようだ。
紳助さんは、先月23日の引退記者会見で、十数年前にあったトラブルを解決してくれたのが、暴力団関係者だったことを明らかにした。
会見では、この暴力団の実名を伏せたが、警察当局によると指定暴力団山口組のナンバー4にあたる最高幹部の一人だという。
数年前から各界で暴力団を社会から排除する動きが急ピッチで進んでいる。大相撲も野球賭博事件をきっかけに関係断絶に動いた。
警察庁は安藤●春長官の陣頭指揮のもと暴力団壊滅作戦に全力を挙げている。同長官は2年前に長官に就任して以来、暴力団の取り締まりに執念を燃やす。
今年1月6日の年頭会見では、「今年は暴力団対策が最重要課題だと位置付けている」「さらに暴力団対策を進めることで、日本の治安の風景を変える覚悟でやりたい」と述べたほどだ。
とくに、暴力団組織の頂点に立つ山口組の徹底摘発を全国の各警察本部に指示している。「山口組の弱体化なくして暴力団の弱体化はない」とまで言い切る。
また、暴力団への利益供与や不動産を組事務所に貸すことなどを禁じた「暴力団排除条例」が来月1日、東京都と沖縄県で施行される。これで全都道府県が同条例の施行で足並みをそろえることになる。
こんな折に明るみに出た紳助さんと暴力団幹部との関係。紳助さんが所属した吉本興業も、謹慎などの軽い処分ではすまされなかった。
以前は、暴力団と芸能人の関係に今ほどに厳しい目が向けられることもなかった。もはや時代が変わっていることを、芸能人も所属事務所も認識すべきだ。
●=隆の生の上に一