「不磨の大典」見直し広がる。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【風を読む】論説委員長・中静敬一郎




東日本大震災から半年が過ぎ、非常事態に関する規定をほとんど持たない憲法を見直す動きがようやく、形になりつつある。

 象徴するのは、超党派の「憲法96条改正を目指す議員連盟」への参加者が250人に迫る勢いをみせていることである。憲法改正を発議するには、衆参両院の3分の2以上の賛成を必要とするが、これを過半数の賛成に緩和するのが議連の主張だ。不磨の大典をまず見直そうというわけだ。国民投票法によると、憲法96条の改正原案を国会に提出するには提案者と賛同者を合わせて、衆院で101人、参院で51人を確保すれば可能だ。与党と野党で半数ずつの名簿を提出したいと訴えている。

 これに併せ、これまで「開店休業」状態だった改正原案の審議の場となる両院の憲法審査会も13日からの臨時国会で始動の運びとなる。

 こうした広がりをみせているのは、憲法の非常事態条項が、衆院解散中、「国に緊急の必要」があるときは参院の緊急集会を開催できるとしているだけであり、国家として緊急事態に適切に対処できないことが明白になっているためだ。

 8月には前衆院憲法調査会長の中山太郎元外相が具体的な改正試案をまとめた。憲法に緊急事態条項を盛り込み、首相が国民の自由や権利を一時的に制限する内容だ。

 実は災害対策基本法は、首相が「災害緊急事態」を布告し、私権制限など必要な措置を取ることができると定めている。だが、この措置は国会が閉会中などを条件にしている。3月11日は国会が開かれており、上記措置の実行には国会を閉会しなければならなかった。

 なんとも、おかしな、もどかしい規定は、憲法に明文規定がないためでもある。当時、水やコメなどの不足に加え、売り惜しみなどもあった。こうした事態を傍観しているだけだった前首相は論外として、国民を不幸にしないためには、憲法を含め備えを万全にすることが国家の最高かつ最大の責務である。