【主張】管制情報漏洩
羽田空港の主任管制官が自らのブログを通じ、昨年11月にオバマ米大統領が来日した際の専用機エアフォースワンの飛行計画を、インターネット上に漏洩(ろうえい)させるという信じ難い事件が起きた。
米大統領専用機の飛行計画は、外に漏れれば次回のルートが推測でき、テロリストなどに悪用される危険性もある。重要な国家機密となっている。米政府が日本政府に再発防止の徹底を申し入れたのも、当然である。
今回の件は、日米同盟関係に深刻な影響を及ぼしかねず、国土交通相の進退に発展しかねない重大事だと認識すべきである。日米首脳会談も近い。野田佳彦政権は誠意をもって、米政府に対し善処しなければならない。
国交省によると、管制官は福島第1原発のデータを収集していた米軍無人偵察機などの管制情報も流出させていた。事情聴取に「平成13年からブログを立ち上げ、職場で撮った写真や管制内部の情報を知人に見てもらうために掲載していた」と話している。
大統領専用機の飛行計画をはじめ一連の管制情報は、この管制官が職場で撮影したものだ。その折に、職場の上司や同僚管制官は見とがめなかったのか。
そもそも、職場へのカメラ持ち込みは禁止されていないという。重要な管制情報を扱う職場としては脇が甘過ぎる。
官庁や企業の重要情報が頻々としてネット上に流れ出す時代である。職場では、管制官のブログ掲載を分かっていながら、危機を事前に察知できなかったのか。
国交省は、管制官が国家公務員法の守秘義務違反に抵触する可能性があるとみて、調査を始めた。管制官の行政処分を検討している。捜査機関に告訴して刑事責任も追及する必要がある。
さらに、組織の情報管理、人事管理のあり方まで含めて徹底検証し、監督責任まで厳しく問い、再発を防止しなければならない。
管制官をめぐっては、ツイッターで管制施設見学ツアーを呼びかけたり、中学生に航空機と交信させたりする不祥事が発覚した。弛緩(しかん)しているというほかない。
今回の事件はしかし、次元が違う。日本は、同盟国の重要情報を簡単に外部に漏らし機密が保持できない国家だと見なされ、同盟国の信頼を完全に失った。国益毀損(きそん)の大きさは計り知れない。