【風を読む】論説副委員長・高畑昭男
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110823/stt11082308120002-n1.htm
民主党代表選が月内にも行われる見通しだが、ここ数カ月の各種世論調査で主な与野党政治家の一覧から「総理にふさわしい人」を尋ねると、「この中にはいない」という回答が一貫して3割台と断トツで最上位を占める。「ミスター・イナイを超える人はいないのか?」といったジョークが生まれるのもそのためだろう。
今度こそ、「イナイ」氏を超えて「総理にふさわしい人」を選んでほしいというのが多くの国民の願いに違いない。
だが、今の民主党ではあまり期待できそうにない。「ペテン師」「ウソつき」といった個性的な人々に加えて、党そのものが国民や他党との約束をきちんと守れるのかどうか、心配が絶えないからだ。
米政界には「すべての政治はローカルだ」(オール・ポリティックス・イズ・ローカル)という警句がある。議員たる者、中央でいかに高尚な理想を論じようと、まずは当選しなければ始まらない。地元有権者の実利を忘れるなという意味だ。
だからといって、中央で約束したことを地方で裏切っては、お話になるまい。民主党が自民、公明両党との約束で来年度から廃止を決めた子ども手当について、「『子ども手当』存続します」「3党合意により恒久的な制度になりました」と大書したビラ約35万枚を全国の総支部に配ったという“事件”は、その象徴ともいえそうだ。
党の責任者は「党員や地方議員らに配る内部資料」と強弁したそうだが、時と場合で言うことがくるくる変わるのでは、約束も何もあったものではない。35万枚のビラは35万回のウソを並べたと同じことではないのか。しかも、党機関紙でも同趣旨の記事が掲載されたという。
代表選では、子ども手当を含むマニフェスト(政権公約)の破綻をどう見直すかが真っ先に問われる。謙虚に、誠実に、約束を違(たが)えない姿勢を証明しなければ、もはや誰も民主党を信用しないだろう。