米シャトル引退後の宇宙開発。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【環球異見】
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110718/chn11071806490000-n1.htm


米航空宇宙局(NASA)のスペースシャトル最後の飛行を続ける「アトランティス」が21日帰還する予定だ。シャトル引退は宇宙開発における米国の指導的地位の終わりを意味するのか。米紙は危機感を隠せない。ロシアや中国は、チャンス到来を意味する最後の打ち上げを控えめに報じつつ、宇宙での国際競争のリードに意欲をのぞかせる。

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 ▼北京青年報(中国)

 ■「歴史に告別」…国際協力の時代へ

 自国の有人宇宙船「神舟」や月周回衛星「嫦娥1号」の打ち上げ成功を大々的に伝えてきた中国紙が、米スペースシャトルの最後のフライトについては、驚くほど控えめだった。

 北京青年報(10日付)は1面に国営新華社通信が配信した「スペースシャトルが歴史の舞台に別れを告げた」と題する記事を掲載した。写真も載せはしたが、米プロバスケットボール(NBA)からの引退を決めた姚明の写真の4分の1程度の大きさ。他紙も大差ない扱いだった。

 中国が宇宙開発に関心がないわけではない。それどころか宇宙進出には強い意欲を燃やしている。国営の国際ニュース専門サイト、国際在線は9日付で「中国は米露に次ぎ、人類を宇宙空間に送り、宇宙空間での航行を実現させた3番目の国家である」と自賛。米専門家の言葉を引用し、スペースシャトルの“退役”によって、宇宙開発は国際協力の時代を迎えると分析している。

 2009年にオバマ米大統領が訪中した際、米中は宇宙開発に関する対話の開始を約束したが、企業間の部分協力にとどまり、政府間の協力態勢は整っていない。米専門家は「協力が限られているのは政治的、軍事的理由による」と指摘。中国の急速な宇宙開発の背景に、宇宙条約で禁止されている天体の領有権主張や軍事利用の狙いがあると感じているのだろう。

 年内にも予定される初のランデブー・ドッキング計画を成功させれば、中国は新たな対米交渉カードを手にする。13日付の国際情報紙、環球時報(英語電子版)は「中国は宇宙の平和的開発を支持している。軍拡競争を誘因する軍事利用には反対している」と主張するが、“中国脅威論”は大気圏外まで広がっている。


                                       (北京 川越一)



▼ロシア新聞(露)

 ■のぞく自信、ちらつく胸算用

 12日付の政府系ロシア新聞は「ミッションは終了へ」と題する記事で、最終飛行に出発した米スペースシャトル「アトランティス」は、軌道上で人工衛星に燃料を自動補給する「とても重要な実験」を担っていると持ち上げた。

 これが可能になれば衛星の耐久年限が延びる上、追加的な宇宙船を打ち上げる必要がなくなり、宇宙飛行士の危険な任務も減る利点があるのだという。

 米国の技術にエールを送る一方、記事は後段でロシア政府の宇宙ビジネスの“胸算用”にもふれている。

 NASAは2014、15年にそれぞれ6人ずつ、日本や欧米の宇宙飛行士をロシアの宇宙船ソユーズで国際宇宙ステーション(ISS)に送る計画だが、このためにロシア側に支払う金額は7億5300万ドル(約597億円)に上る。

 6人をISSに送る予定の12年の契約金(3億600万ドル)と比較すると、1人当たりの“運搬料”は10億円ほど値上がりする形だ。記事はこうした数字を淡々と伝えながら、“宇宙大国復活”への自信をのぞかせている。

 1967年、71年の2回の事故以降、死亡事故は起きておらず、最新技術はない代わりに高い安全性を誇るソユーズ。スペースシャトルの引退でISSへの運搬は当面、独壇場となる。

 「ロシアは宇宙への運搬役にとどまらず、宇宙開発市場で存在感を強める」

 ガガーリンによる人類初の宇宙飛行から50年となった今年4月、プーチン首相は世界の4割を占めるロケット打ち上げのシェアを5割に引き上げる方針を示した。自前の宇宙ステーション「ミール」を予算不足のため破棄してからちょうど10年。ロシアに訪れた巨大な商機に、首相が胸を張りたくなる気持ちも分かる。


                                    (モスクワ 佐藤貴生)


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▼ワシントン・タイムズ(米国)

 ■指導的地位終わりの前兆か

 「真剣に(政策の)軌道修正に取り組まなければ、スペースシャトルの最終飛行は、宇宙開発に関する米国の優位性の終焉(しゅうえん)の前兆となるだろう」

 先代ブッシュ政権で宇宙開発に関する大統領首席顧問を務めたマーク・アルブレクト氏は7日付のワシントン・タイムズ紙に寄稿し、米国の宇宙計画は崩壊の危機にあると警告した。

 アルブレクト氏は、月面着陸に成功した1969年以降、米国の宇宙開発は「米国人の精神、独創性、技術的能力の象徴だった」とし、経済成長の持続と「無敵の軍事力」の確立にも貢献したと振り返る。

 だが、熾烈(しれつ)な競争を繰り広げたソ連の崩壊と時を同じくして、「緩やかだが、着実な衰退」に向かったと指摘し、現状は「過去の蓄えの食いつぶしだ」と酷評する。その理由として氏が挙げるのは、政治家や官公庁、企業にはびこる「慢心と浪費、官僚主義」だ。

 政治家は選挙区の雇用情勢を気にしてNASAなどの再編に抵抗し、組織の効率運用を阻害した。企業は技術革新を忘れて目先の利益を追求し、巨額の宇宙開発費の“分け前”を狙う学界は、学術的検証をないがしろにして政府の指針を承認した。

 こうした長年のなれ合いが米国を「現状維持のみに熟達した組織」に変質させて、宇宙分野での指導的地位から後退するに至ったと氏は分析する。巨額の財政赤字に加え、焦点の定まらないオバマ政権の宇宙計画も、衰退に拍車をかけかねないと懸念を示す。

 「次の数十年間も、宇宙は米国に経済発展と技術革新を促す触媒であり続けるだろうか」。氏はこう問いかけ、リーダーシップの再興には、戦略の明確化と抜本的な組織改革が不可欠と指摘している。


                                   (ワシントン 犬塚陽介)