【社説検証】
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110718/plc11071806520004-n1.htm
■首相無責任と論じた産読日 朝日は“歓迎ムード”に踊る
菅直人首相が13日夕の記者会見で、「将来的に原発に依存しない社会を目指す」と明言し、日本のエネルギー政策を大転換させる考えを打ち出した。
朝日が「首相の方針を歓迎し、支持する」と賛意を明確にしたのは、これまで同紙が大々的に「脱原発論」を展開してきたことから予想されたにしても、「首相が交代した後も、この流れが変わらぬような道筋をつけてほしい」「与野党を問わず、政治全体として脱原発という大目標を共有して、具体化へ走り出そう」と、「脱原発」の問題点にはほとんど触れないまま、“歓迎ムード”に浮かれたような論調に終始した。
対して産経、日経、読売、東京の4紙は、菅首相の発言を強く批判した。産経は「中長期的に再生エネルギーを強化してゆくことも、方向性としては妥当」としながらも、「基幹エネルギーの転換をどう円滑に進めるかだ。首相はこの点を全く説明しておらず、無責任以外の何物でもない」「エネルギーの安定供給という政府の責任を放棄した」と断じた。
日経も同様に「国民生活などへの影響の大きさを考えれば、首相の発言は無責任」と論じる。読売は「代替電力の展望もないまま原発からの脱却ばかりを強調するのは、あまりにも非現実的」とし、「安全確保を徹底しつつ、原発利用を続けることが、経済の衰退を防ぐためには欠かせない」と原発の有用性をも訴えた。
産経、読売、東京の3紙はさらに、今回の方針が菅氏の政権延命策に当たるとして、「単なる政権延命のためだけの政策転換は、もう許されない」(産経)、「政権延命を狙って大風呂敷を広げただけでは困る」(東京)などと語気を強めた。
「考え方については基本的に支持し、評価したい」とした毎日は、やや抑え気味ながら「将来とは一体、いつごろを考えているのか」「『十分に必要な電力供給は可能』と明言したが、もっと具体的な数字を挙げて説明しないと説得力を欠く」などと、発言内容の不備をついた。
ただ「政府・与党としての考えをまとめる作業を急いでもらいたい」とした毎日に対し産経など3紙は、菅氏が重要な政策の決定に携わることが不条理だと強調する。
「退陣を表明して『死に体』となっている首相が国の将来を左右する新たな政策に取り組むことがあっていいのだろうか」(産経)▽「中長期的な国家戦略は新政権の下で、腰を落ち着けて議論するのが筋」(日経)▽「退陣に言及した首相にはすでに、政府を動かす政策実現力が残されていない」(東京)
15日の閣僚懇談会では首相自ら、会見での発言内容は個人的な考えだったと釈明した。国の基幹的な政策が首相個人の思いつきに翻弄されているのだ。
産経は14日付の主張で「一刻も早い退陣こそ求めたい」と迫り、16日付でも「最高指導者の発言として、あまりに軽く」「居座りを続けていることで実害は拡大する一方だ」と断じ、「首相の即時辞任を求める」と重ねて訴えた。
「そもそも『信頼も信用もされない総理は何をやったって存在それ自体が政治空白だ』と言い放ったのは野党時代の首相自身である」(東京)
まさか菅サン、その発言も「思いつきだった」と言うのではありますまいな。(清湖口敏)
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■首相の「脱・原発依存」会見を受けた各社社説
産経
・その場限りで信用できぬ
朝日
・政治全体で取り組もう
毎日
・目指す方向は評価する
読売
・看板だけ掲げるのは無責任だ
日経
・菅首相の「脱原発依存」発言は無責任だ
東京
・政権延命狙いでは困る
〈注〉いずれも14日付