災統合任務部隊指揮官・陸将 君塚栄治
ニーズがある限り、最後の瞬間までやる
--指揮官は震災後は駐屯地暮らしだったとか
君塚 最初の2カ月間はここ(執務室)にベッドを置いて住んでいました。
--食事なんかは
君塚 最初は缶詰です。みんな口内炎になりました。第一線は1カ月以上食べ続けていたんで、口内炎の報告が次々に来た。理由はビタミン不足とストレス。何万人の者が口内炎で口がきけない、水がしみて飲めないというようなことになったら作戦上、重大な欠陥だからビタミン剤を送れということになった。ところが、食事がレトルトに替わり、治っていった。
--どういうことです
君塚 レトルトには栄養素が入っているんです。でも、レトルトにもビタミンCや生野菜のファイバー(繊維質)はありません。これはトイレが困る。固まって、出ない。第一線にはトイレを我慢しろと言いました。周囲はがれき。どこにご遺体があるか分からない。立ち小便はできない。みんな水と食べ物を控えたわけです。朝、宿営地を出たら簡易トイレがない限りトイレはできないから。ところが、便秘になってトイレの必要がなくなった。第一線で何が欲しいかと聞くと、ビタミン剤、もう一つは野菜ジュースやサプリメントのファイバーでした。
--マニュアルに入れないといけないですね
君塚 そうです。
--大震災から3カ月がたちました。東北の被災者は我慢強いですね
君塚 特に離島の方や半島部の方はそうです。「困っていることは」「もっと欲しい物は」と聞きます。「いや自衛隊さんが支援してくれるから十分です」と言った方のサンダルは、片方が壊れている。服はドロドロ。「風呂に入れたんですか」と聞くと、「3日前に入れたから十分です」という。靴や服の救援物資があると言っても、「結構です。私は十分足りてますから、もっと困っている人のところに行ってください」と、自分のことよりも人のことを考える。それが東北ですよ。でも、その人を見たら決して恵まれているとは思えない。
--今後は
君塚 被災者のニーズがある限りです。それを取りまとめる自治体の長から要請がある限り、最後の瞬間までやる。命令がある限り、この地にいる限り、最後の最後までニーズを求め、それに応えるのがわれわれの任務です。
(石田征広)