一定のめど症候群。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





【from Editor】官邸に蔓延

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110621/plc11062107380008-n1.htm





「一定のめど」が学校の教育現場で盛んに使われているらしい、と教育産業関係者から聞いた。使うのは生徒だ。

 教師が生徒に、掃除をやるように、とか、教室の移動を速やかに、などと指示を出すと、「一定のめどがついたら」と返ってくるのだという。教師は「今すぐにやりなさい」、あるいは「一定のめどとはいつか」などと作業を促すという。やれやれである。

 菅直人首相がこの言葉を使って退陣を表明したのが6月2日。その後のしぶとさには目を覆う。

 その教育関係者は「子供は、学んでほしくないと思う事柄に限って素早く学ぶ」と苦笑する。そして、「お笑い番組の中に、子供に見せたくないなどとレッテルをはられているものがあるが、私にとっては、うそのつきかたやごまかし方、はぐらかし方が詰まった政治の報道番組や国会中継の方が子供に見せたくない番組にあたる」と真顔で言った。

 時間稼ぎをする「一定のめど」症候群の弊害は経済にも及ぶ。

 1年前の6月18日、政府は日本経済を地盤沈下から救うための対応をまとめた「新成長戦略」を閣議決定した。

平成32年度までに実現を目指す経済政策を、環境、健康大国、アジア経済、観光など7つの分野に分類して盛り込んである。23年度中にデフレから脱却し、年平均の経済成長を実質2%超、物価変動を含む名目で3%超を目標に置くことも明記した。

 

しかし足取りは重い。

 

 実施に移すための会議を発足させたのは、閣議決定から3カ月後の9月になってからだ。経済界が期待した法人実効税率の5%引き下げは、年末の23年度税制改正大綱に盛り込まれたものの、棚上げ状態にある。

 国際競争力獲得の期待がかかるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築では、柱のひとつである環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の参加交渉について、6月の判断を見送ることにした。東日本大震災の復興優先は理由にならない。それまでの時間を使えなかったことこそが問題なのだ。

 ほかにも、震災でのがれき処理の遅れ、復興基本法策定、復興庁発足の遅れなども症候群の弊害に挙げられよう。

 蔓延(まんえん)すれば日本全体が機能不全となる、官邸を震源地とした「全日本大震災」になりかねない。食い止める方法は、官邸自身が知っているはずだ。

                                    (副編集長 村山繁)