国の主権は政治的思惑で歪曲された? | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





【新聞に喝!】

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110619/plc11061907390004-n1.htm




大森事務所代表・大森義夫



 東京都立川市の警備保障会社から史上最高の6億円を強奪した犯人のうち5人が逮捕されたのは明るいニュースだった。被災地をはじめ全国民が歯をくいしばって頑張っている、この時期に社会基盤を突き崩すような荒っぽい犯罪を放置してよいはずがない。しかし、捜査はこれからであろう。被害にあった会社は現金管理がひどくずさんだし、犯人グループの全容も闇のままだ。

 

 日本人は忍耐と礼節で3・11を乗り切ったが、震災後どう変わるか? どこへ行くのか? 犯罪の諸相は社会の動き方を示す指標でもある。警視庁の奮励を期待するが、新聞も背景の掘り下げに努めてほしい。最近電車内で急に切れて怒鳴る中年オヤジや身勝手な若者(男女)が目立つ。日本社会が培ってきた日常的な徳義感を取り戻すのも震災からの復興の大事な要素だと思う。総員イライラの風潮に少しゆとりを持たせたい。

 

 そう思いつつ永田町を見ると、そこは徳義のかけらもみられない世界だ。新聞報道もブレが大きい。朝日は直前まで菅直人内閣の続投支持だったのに、不信任案が否決された後、若宮啓文主筆が「首相は潔くあれ」と書き、社説で「菅さん、それはないでしょう」と書いた。これではムード歌謡である。首相の退陣を求めるのなら、その理由を具体的に示すべきだ。

まさに、このタイミングで中国海軍の艦艇11隻が沖縄本島と宮古島の間を昨年4月以来、再度航行した。各紙とも防衛省発表の事実は報道しているが、国民各層に深く考えてもらうよう問題提起がほしい。14日付よみうり時事川柳に「マヒしてる間に盗まれる領土」と鋭い一句がある。

 

 大災害から3カ月、各紙は経過の検証記事を載せた。本来は国政調査権に基づいて国会が担うべき責務だと思うが、畑村洋太郎氏を委員長とする政府の事故調査委員会が発足した。東電と政府による情報隠蔽(いんぺい)と虚偽発表が検証されるであろうがポイントを一つ挙げておきたい。東電は(政府の一部も)被災直後に炉心溶融(メルトダウン)発生を察知したはずである。しかし、官邸幹部が「メルトダウン」という言葉のおどろおどろしさを嫌って発表を禁じた。米国はメルトダウンの発生を予測、自国民を80キロ圏外に避難させた。

 

 日本国内で起き、日本国民の生命にかかわる事案である。日本国の主権は官邸の政治的思惑により歪曲(わいきょく)されたのではないか?

                  


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【プロフィル】大森義夫

 おおもり・よしお 昭和14年東京都出身。東京大法卒。38年警察庁入庁。元内閣情報調査室長。