【風を読む】
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110614/stt11061408190005-n1.htm
論説副委員長・高畑昭男
菅直人首相が退陣時期を明示していないというのに、早くも民主党内で「有力後継候補」が次々と浮上しているそうだ。新聞報道によれば、中でも有力とされる候補は主要閣僚として「政策の継続性」があり、菅氏らと激しく対立してきた小沢一郎元代表のグループの抵抗や拒否感も比較的少ないという。
菅氏らが進めた「脱小沢路線」に距離を置き、「政治とカネ」をめぐる小沢氏の処分にもタッチしなかったからだそうだ。有力候補氏本人も「怨念の政治を超えなければ」などと語り、「党内融和」「挙党態勢」を重視する方向がみてとれる。
だが、ちょっと待ってほしい。そうした「有力」の根拠は言い換えれば、決断もせず、対決もせず、政策も修正しないということではないのか。「決めない、戦わない、見直さない」というネガティブ三拍子がそろったような人しか選べないようでは国民の期待とは逆だろう。
「脱小沢か、小沢親政か」を懸けて昨年9月に行われた党代表選から1年もたっていない。当時、菅氏は「クリーンな政治(脱小沢)」を掲げ、今では「4K」と呼ばれる党のバラマキ政策の見直しを党員や国民に訴えていたのではなかったか。
菅、小沢両派の対立の根っこにあるのは、感情的な「怨念」だけではない。バラマキ4Kの是非を中心とした重要な政策路線の対立がある。だからこそ、今に至るも対立が解消できなかったともいえる。
政権政党の背骨ともいうべき基本路線の対立を整理できないまま、安直な党内融和や「挙党一致」をめざすということなら、結局は何もせずに、対立点、問題点も先送りするということでしかあるまい。
党内に波風を立てず、代表選を穏便に済ませるにはそれで平気かもしれない。だが国民からすれば、ルーピー、ペテン師と続いた不甲斐(ふがい)ない代表に続いて、もう一人の「何もしない人」を後継者にするだけだ。
「国益よりも党益」のたらい回しはもうやめたほうがいい。