被災者の遺影を手に取られた天皇陛下
今週も皇太子ご夫妻で説明お受けに
天皇、皇后両陛下は27日、東日本大震災の被災地となった宮城県南三陸町を訪問された。甚大な被害を受けた東北の被災地に入られるのは初めてとなった。
両陛下は、羽田空港から自衛隊機で航空自衛隊松島基地ヘ。そこから自衛隊ヘリに乗り換え、臨時ヘリポートとなった町立伊里前小学校の校庭に降りられた。
復旧活動や安全性に配慮し、地上からの被災状況の視察は、高台に位置する小学校の校庭から、眼下をご覧になる形で行われた。
先ががけになっている校庭の端で、両陛下は2回黙礼をされた。目の前には激しく破損した住宅の屋根が見え、ほとんどがれきしかなくなった町や、赤い旗を持った人が交通整理をしている道路、橋の一部が落ち、橋脚だけが残っている様子などが見えた。
佐藤仁町長によると、両陛下は惨状に心を痛めたご様子だった。皇后さまが「あそこが橋だったんですか」と聞くと、陛下は「左の方に少し残っているよね」と話されたという。
両陛下は南三陸町に2時間余り滞在した後、再び自衛隊ヘリに乗り、仙台市にご移動。宮城野体育館では、妻を亡くした男性が遺影を陛下に見せていた。陛下は「津波でお亡くなりになったんですか」「お気の毒でした」と言葉をかけられたという。
男性は「遺影を手にとって、じっと見つめてくださった。家内は皇室番組を欠かさず見ていた。喜んでいると思います」と話した。
皇后さまの優しいお言葉に涙を流す被災者も多かった。「よくここまで生きてくださって…」。皇后さまのお言葉に3人の女性が「がんばりますから」と、皇后さまの手を握り、涙を流した。皇后さまは「大丈夫、大丈夫。ここまでよく耐えられて。お辛くいらしたのでしょうね。お元気でいてくださいね」と励まされた。
両陛下が退出される際には、南三陸町、仙台市の避難所とも、被災者から自然に拍手がわき起こった。宮城野体育館の避難所運営委員会代表、片桐勝二さん(60)は「避難所がこれほど和やかになったのは初めて。もう少し滞在されてほしい、というなごり惜しさもあった」と話した。
宮城野体育館では津波で自宅を流された女性が自宅跡地に咲いたスイセンを皇后さまに手渡す場面もあった。宮内庁によると、皇后さまは花束を大切に持って帰り、御所の中で飾られたという。
両陛下は28日、英王室のウィリアム王子の結婚につき、エリザベス女王夫妻に祝電を発せられた。宮内庁によると、当初、結婚式に招待された皇太子ご夫妻もお祝いの気持ちを伝えられたという。
皇后さまは26日、皇居・吹上地区の屋外施設で、野外で育つ蚕「天蚕」の卵をクヌギの枝に付ける「山つけ」を行われた。養蚕は明治以降、皇后に引き継がれている伝統という。
皇后さまは「野蚕室」と呼ばれるナイロン製の網に覆われた施設に入り、約25個の卵が張られた短冊状の和紙を、ホチキスを使って次々と枝に付けていかれた。宮内庁によると、皇后さまはクヌギの枝や葉の伸び具合について質問されたという。10日ほどで幼虫になり、6月中旬から7月はじめにかけて、緑色の繭を作るという。
皇太子ご夫妻は今週も震災に関連し、専門家などから説明を受けられた。25日には放射線基礎医学が専門の草間朋子・大分県立看護科学大学学長、26日には斉藤正樹・東工大原子炉工学研究所教授を御所に招かれた。
宮内庁の野村一成東宮大夫によると、ご夫妻は熱心に質問され、説明はそれぞれ2時間近くに及んだという。皇太子妃雅子さまも強い関心を持ち、長時間の説明にも疲れた様子は見せられなかったという。
28日にはご夫妻で、近衛忠●(●は火偏に軍)・日本赤十字社社長らから説明をお受けになった。
皇太子さまは28日、「水関連災害有識者委員会」の創設議長で、韓国元首相のハン・スンス氏ら3人と懇談された。同委員会は、皇太子さまが名誉総裁を務める国連「水と衛生に関する諮問委員会」と関係の深い組織という。
ハン氏ら3人は東日本大震災について世界の有識者が集う「水と災害に関する東京会議」に出席後、会議の内容などを報告するため東宮御所を訪ねたという。
各宮家は今週もさまざまな公務を果たされた。
秋篠宮ご夫妻は25日、群馬県を日帰りで訪問し、東吾妻町の2カ所の避難所を訪問された。ご夫妻でレクリエーションの玉入れに参加されたり、秋篠宮妃紀子さまが、手話で被災者と意思疎通を図られたりする場面もみられた。
秋篠宮さまは「お体は大丈夫ですか」と被災者らに声をかけられた。福島県南相馬市から避難した木幡トシさん(74)が「なかなか眠れません」と話すと、紀子さまは「外に出て、大陽を浴びたら元気になりますよ」と励まされた。
ご夫妻は26日、宮邸で、国連人口基金(UNFPA)事務局長らと懇談された。27日はお住まいの宮邸で、国立成育医療研究センター関係者から説明を受けられた。
紀子さまは26日、宮邸で、産経児童出版文化賞選考委員と産経新聞社企画事業部長から、第57回産経新聞児童出版文化賞について説明を受けられた。
高円宮妃久子さまは26日、宮邸で、フランス弓道連盟会長らと懇談された。