【消えた偉人・物語】「二年生」の歌
新しい1年生が入学してきた。2年生になった子供たちは、その1年生を小さく感じ、ちょっとした優越に浸ることだろう。「もう1年生ではありませんよ」などと、担任の先生からも言われてその気になったりする。その2年生になって最初に勉強する修身の教材がある。昭和19年文部省発行「ヨイコドモ 下」に載っている。
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二年生
ケウシツガ
カハッタ。
机モ
カハッタ。
ウレシイナ。
一年生ガ
ハイッテ 来タ。
弟ヤ 妹ガ タクサン デキタ。
ウレシイナ。
本ガ新シク ナッタ。
チャウメンモ
新シク ナッタ。
二年生ニ ナッテ
ウレシイナ。
私タチハ、一年生ノ セワヲ シマス。朝、學校へ 来ル 時、サソヒマス。學校デ、イッショニ アソビマス。
私タチハ、先生ノ ヲシヘヲ マモリ、三年生ヤ 四年生ニ ナラッテ、ヨイ子ドモニ ナラウト 思ヒマス。
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きっと誰もが、思わず声に出して読みたくなるのではないか。特に、三連から成る詩の部分は引き締まった常体文で心地よいリズムを生む。終わりの行は全て「ウレシイナ」で統一され、心が浮き立つ思いだ。
また、その後は「です、ます調」の敬体文に変わり、そこからは2年生なりの成長を自覚させようとする編者の思いが読み取れる。全文が一人称で書かれており、声に出して読めばそのまま新2年生としての自覚と誇りを宣言する形にもなっている。心憎いばかりの好教材ではないか。
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この度の東日本大震災で被災された方々のご心痛はいかばかりかと、心よりお見舞い申し上げます。私たち日本人はこれまでも幾多の大災害の難を克服しつつ今日を築いてきました。その不屈の底力を信じ、どうぞ頑張ってください。(植草学園大学教授 野口芳宏)
修身教科書に載っている当時の学校風景の絵=「復刻 国定修身教科書」(大空社)