強制ありきは順序が違う。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 






【主張】電力使用制限



海江田万里経済産業相が電力の大口ユーザーに対し電気事業法に基づき強制的に使用制限を発動する方針を表明した。

 最終的な手段として必要な場合もあるだろうが、国民が一体になって夏場の電力不足を乗り切ろうとしている。日本経団連も自主的な節電計画の策定を進めている。強制措置はこうした努力に水をかけ、経済に悪影響を与えかねないのではないか。

 東京電力の管内で地域ごとに輪番で電力供給を停止する計画停電は、福島第1原子力発電所事故に伴う電力不足で、3月14日から実施されてきた。電力需要が供給を上回った場合、予測できない大規模停電が起きる恐れがあり、それを防ぐための緊急避難だったとされる。

 しかし、計画停電に伴う影響は大きく、信号が消えた交差点では死亡事故も起きた。停電に備えた買いだめで、ロウソクや乾電池が店頭から消え、人工呼吸器などの医療機器を使用する家庭では、非常用電源の確保に追われるといった混乱がみられた。

 特に、企業活動への打撃は深刻だ。工場では1日3時間の停電が実施されると、点検や整備にそれ以上の時間を費やす場合が多い。東日本大震災で今年度の経済成長率はマイナスに転じるとの予測もある。計画停電で生産活動が停滞して日本経済が低迷すれば、被災地支援にも支障が出かねない。

 電力の使用制限は、第1次石油危機の際に発動され、削減率は15%になった経緯がある。今回は、さらに25~30%の大規模制限を検討しているが、計画停電の回避には電力を大量に使用する産業界の節電が何よりも重要だ。少ない電力で高い生産効率を目指すには、世界に冠たる省エネ技術を持つ日本企業の創意と工夫を最大限、引き出さねばならない。

 東日本と西日本の工場で生産品目を調整し、電力需要が少ない夜間や週末の操業なども検討すべきだ。電力需要の急増に備えて、夏季休暇の延長や休暇時期をずらすなどの対策も考えられる。大規模な節電に成功した企業を表彰するなどの取り組みも重要である。

 需要の3割を占める家庭の節電も不可欠だ。個々の家庭の努力がどの程度、全体の節電に結びついたか分かる仕組みがあれば、励みになるはずだ。少し照明を落として節電のアイデアを考えたい。