【緯度経度】パリ・山口昌子
「われわれはオブザーバー。決めるのは日本当局。日本の主権もあるので日本政府や東京電力に情報提供を強制できない」
3月30日に国民議会(下院)の核問題委員会で福島第1原発事故の状況を説明したフランス原子力安全局(ASN)のラコスト局長は何度も指摘した。
フランスは事故発生直後から日本への支援を申請し、情報提供を期待していたが、これに対する「OK」の返事は結局、31日のサルコジ大統領と菅直人首相の首脳会談まで待たなければならなかった。特殊ロボット提供など、東京電力から仏原子力庁(CEA)、仏電力公社(EDF)、仏原子力大手アレバへの「支援OK」の返事も28日だった。
大統領の訪日にはコシウスコモリゼ・エコロジー相、ビゴCEA長官、5人の専門家を同伴したアレバのロベルジョン最高経営責任者(CEO)、ルピュサール放射線防御原子力安全研究所(IRSN)所長、ジャメASN委員が同行した。ロベルジョン氏はミッテラン大統領時代の主要国首脳会議(サミット)のシェルパ(大統領の個人代表)だ。政権が交代しても、「有用な人間は重用」がフランスの基本方針だ。
仏内には、「この期に及んで与野党や政府と東電の間で責任のなすりあいをしているときではない」(仏記者)との指摘もある。東電が海水投下を決めたのは事故後、かなりたってからだが、「なぜもっと早く決行しなかったのか。海水で原子炉を廃炉にするのを恐れたのだろうか」との疑問も出されていた。
東電は30日に原子炉4基の廃炉を発表したが仏専門家は事故発