【産経抄】2月25日 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 







リビアの最高指導者、カダフィ大佐(68)は、とにかく奇矯な振る舞いが目立つ人物だ。2年前に初めて乗り込んだ国連総会でも、騒ぎを引き起こした。「安全保障理事会はテロ理事会」「新型インフルエンザは細菌兵器として軍事目的で作り出されたもの」。

 ▼1カ国15分の演説の規定時間を無視して、1時間36分にわたって持論をまくし立て、国連憲章の冊子を投げ捨てた。ニューヨーク郊外の住宅街に張ったテントで野営しようとして、地元の猛反発を招くおまけもついた。

 ▼1969年の無血クーデターによって革命政府が誕生して以来、国際社会は「砂漠の狂犬」の異名をもつこの人に振り回されてきた。当初は反帝国主義を掲げ、西ベルリンのディスコや米パンナム機、UTAフランス機などの爆破テロに関与したとされる。

 ▼86年の米国による首都トリポリ爆撃にも、屈しなかった。ところがイラク戦を目の当たりにして路線を転換、欧米諸国との関係改善に腐心するようになる。最近は「アフリカ統一政府構想」を打ち出し、周辺国を困惑させていた。

 ▼国際社会でやりたい放題ができたのも、国内の独裁体制が盤石であってこそ。それが今、音を立てて崩れようとしている。チュニジア、エジプトの騒乱は、豊かな地下資源が生み出す富の恩恵を受けてこなかった、民衆の怒りに火をつけた。国内の有力部族や軍の離反も加速しているようだ。

 ▼「天安門では、武装していない学生も力で鎮圧された」。国営テレビですごみを利かせた独裁者の末路やいかに。武力弾圧の「先達」とされた中国政府や、同じような個人崇拝を長年国民に強いてきた北朝鮮の金正日総書記も、無関心ではいられまい。