【日々是世界 国際情勢分析】
1月に訪米した中国の胡錦濤国家主席が米中首脳会談で何度も米国側に尊重を求めた「核心的利益」。共同声明には盛り込まれなかったが、中国は「大国・中国」を国際社会に誇示することに成功した。経済、軍事面で米国と張り合う未来像を中国が描いているのは間違いない。
軍事力を支えるのが経済力だが、内閣府の推計では2025年までに中国は国内総生産(GDP)で米国を上回り、30年には世界全体の約24%を占めるとされている。
もちろん、生産年齢人口(15歳から64歳)の減少、インフレ懸念など経済成長の減速要因があり、予測通りとなるかどうかは不明だが、中国市場を狙う外国企業に対し、中国は製品の中核をなす先端技術の提供や開示を一層求めてくるだろう。購買力を武器に、企業の核心的技術を合弁という形で吸収する事例が増えると予測される。
先端技術は少なからず、軍事への転用が可能だ。1月17日の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、航空機のエンジンを生産する米ゼネラル・エレクトリック(GE)と中国国有企業が合弁企業を設立するとし、エンジンや電子設備など最先端技術が中国に渡る可能性を伝えた。
欧州連合(EU)の対中武器禁輸措置の解除に向けた動きも懸念される。中国はEU製品の大規模な購入やスペイン国債購入など、購買力をカードにした“マネー外交”を展開、禁輸解除に向けた雰囲気作りに余念がない。14日付中国紙環球時報(電子版)などによると、EUのアシュトン外交安全保障上級代表は「武器禁輸が対中関係の主要な障壁」として解除に前向きな姿勢をみせたという。
10日付英紙テレグラフ(電子版)は「中国だけが新たな兵器を購入している。米国の覇権に挑戦するためだけでなく、超大国としての地位を確固たるものにしようとしている」と指摘した。装備・技術を貪欲に購入するだけでなく、武器輸出国として世界の軍事市場に急速に台頭してくる可能性もある。
中国は3月、海洋権益保護や海洋産業発展を初めて明確に掲げた「第12次5カ年計画」(2011~15年)を決定し、資源開発、海上航行の安全保障、島の保護の強化を打ち出す。尖閣諸島などについても「主権は中国にある」と強調していく方針で、海洋権益確保の攻勢を強める構えだ。