英雄と日本刀。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【外信コラム】ソウルからヨボセヨ 



豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に日本軍を迎え撃った李舜臣(イ・スンシン)将軍は、日本でも小説が翻訳出版され、DVDも販売されているから、日本人に最もよく知られた韓国の歴史的人物の一人ではないか。

 小学校など、銅像は韓国全土にあるが、青瓦台に近い世宗路の像は昨年、42年ぶりの補修が済んだばかりでひときわ威容を誇っている。

 その像に対して最近、ソウル市議の一人が「偽物だ。新しい像を作りなおせ」と市側に迫って物議を醸した。

 おもしろいのは市議が偽物だとする根拠で、李舜臣が「日本刀を持ち、中国式の鎧(よろい)をつけている」と主張している。

 敵(かたき)の武器である日本刀を持ち、中国製の甲冑(かっちゅう)をまとっているとあっては民族的英雄の名折れ。韓国の国民感情として絶対に容認し難いだろう。

 しかし実物を見てみると刀には「反り」がないうえ柄頭(つかがしら)が野球用バットのグリップエンドのように膨らんでいて、日本刀とは言い難い。市議側の言い分には無理があるようにみえる。

 しかしそれにしてもなぜ“日本刀と中国鎧”なのか。まさか国民の潜在意識の中の日本、中国に対する対抗心の喚起を狙った? こう考えるのはうがちすぎだろう。

                                       (加藤達也)