豪雪で知られる山形の酒造会社が、雪を逆利用した試みに取り組んでいる。その手法は「雪中蔵囲い」といわれ、醸造された日本酒を、瓶詰めした後に雪の中で寝かすというもの。初めて挑戦する蔵元は「まろやかになるはず」と期待を寄せるが、スヤスヤと冬眠に入った日本酒たちは、春にどんな顔を見せるのだろうか。
酒造会社「六歌仙」(東根市、松岡茂暎(しげあき)社長)は21日、粉雪の散らつくなか、社員(蔵人)総出で会社の敷地内に雪を集め、同社のブランド酒「蔵の隠し酒 純米銀吟醸」約4千本を次々に埋めていった。約500本が埋められた雪は、高さ2メートルほどの小山に姿を変えた。日本酒は約2カ月雪の中で寝かされ、3月上旬に掘り出される。
これまでも0~マイナス2度に保たれた「低温倉庫」で熟成させることはあったが、雪中での保管は同社では初の試みとなる。大きなタンクごと雪に埋める醸造会社もあるが、瓶詰めしてから埋めるのは県内でも珍しいという。
同社の松岡茂和常務(40)は「お酒は温度の変化を嫌います。雪の中は0度からマイナス1度に常時保たれているので、一番適していると思います」。味の方も、「低温熟成は口あたりがまろやかで、酒のやわらかさが違う。山形の風土を生かし、何かとやっかいな雪を天の恵みに変えたい」と話す。
酒は昨秋に収穫した県産米「出羽燦々(さんさん)」を使用。まったく濾過(ろか)をしない「あらばしり」ではなく、濾過しているという。
雪が溶ける際の波動が、熟成に適しているとの説もあるという。雪の中でぐっすり眠った日本酒は3月5日、客が年に一度蔵への出入りを許される「蔵参観」で掘り出される。
ところで、敷地内で盗難の心配は? 「前に入られたこともありますが、そういう人がいないことを信じています」。性善説のお酒はまたひと味違うかも。
3月10日に全国発売。1・8リットル2980円(税込み)、720ミリリットル1480円(同)。問い合わせは(電)0237・42・2777まで。
蔵人総出で雪山作り=山形県東根市
酒はケースに入れられ、ビニールシートをかぶせた上で雪の中に=山形県東根市
日本酒が埋められた雪山には祭壇が作られ、御神酒があげられた=山形県東根市
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110123/trd11012307010053-n1.htm