皇統をめぐる議論の真贋。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 






【from Editor】



皇統をテーマにした「別冊正論」第14号〈皇室の弥栄(いやさか)、日本の永遠を祈る〉を発行した。

 民主党政権の皇室軽視、傲岸不遜は目に余る。平成21年12月、当時の小沢一郎幹事長が天皇陛下と習近平中国国家副主席の“特例会見”を鳩山内閣とともに強引に実現させたことは記憶に新しい。小沢氏は「内閣が判断したことについて、陛下がその意を受けて行動なさることは当然のことだ」と述べたが、天皇の政治利用を正当化した傲慢な発言である。

 この姿勢は小沢氏特有のものではなく、民主党の本質に深く関わっている。卑近な例だが、昨年11月、中井洽(ひろし)衆院議員が「議会開設百二十年」の式典中、秋篠宮殿下に発した「早く座れよ、こっちも座れないじゃないか」というやじにも表れている。こんな民主党に対し、羽毛田信吾宮内庁長官は政権発足直後、皇室典範の改定に関して「女性・女系天皇容認」含みでの論議を進めることを要請した。

 「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」。皇室典範第1条にはこう明記されている。現在、皇位継承権を持つ男子の皇族は7人、未成年は秋篠宮ご夫妻の長男、悠仁(ひさひと)さまだけ。たしかに「皇位の安定継承」のために議論は必要である。しかし、その方向性、議論すべきことの優先順位はいかにあるべきか。

振り返れば、小泉政権下の16年末、「皇室典範に関する有識者会議」が設けられ、有識者の中に皇室や皇統問題に詳しい専門家不在のまま、1年足らずの議論で「女性・女系天皇容認」「男女を問わず長子優先」という結論が出された。女性天皇と女系天皇の区別も不明確で、男系継承されてきた皇統の歴史を根底から否定するものだった。

 国民から批判の声が上がったにもかかわらず、政府は有識者会議の結論に沿った皇室典範改定案を国会に提出しようとしたが、18年9月、悠仁さまのご誕生もあって改定案は棚上げされ、以後、女性・女系天皇を認めようとする拙速な議論も沈静化した。それが今再び動き出そうとしている。

 皇室の弥栄と日本国の永続を願う国民にとってあるべき皇位継承とは-。なぜ125代にわたって男系で継承されてきたのか。連綿と受け継がれてきた先祖の意思、その“遠くの声”に耳を傾け、歴史の事実に虚心に向き合うとき、「もはや男系継承は無理、万策尽きた」という主張がいかにも浮薄なことに想(おも)い到る。


                      (「別冊正論」編集長 上島嘉郎)