一点だけ、菅政権を高く評価。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





【40×40】笹幸恵



昨年は「平和を愛する諸国民の公正と信義」が信頼できないことを証明する出来事が相次いだ。もはやここで述べるまでもないが、韓国による竹島の実効支配、尖閣諸島沖での中国の「漁船」による衝突事件、露大統領の北方領土の電撃訪問と、この1年間で、多くの国民はわが国のぬるま湯の“ぬるさ”に気がついたのではないだろうか。そしてまた、民主党政権の体たらくにじだんだを踏んだ人も少なくないだろう。

 ただし一点だけ、私は菅政権を高く評価している。戦没者の遺骨帰還事業である。就任早々から「硫黄島からの遺骨帰還のための特命チーム」をつくり、昨年12月には首相自らが硫黄島へと足を運び、戦没者の遺骨を拾った。数年前からこの問題に取り組んでいる私としては、これが産経新聞の1面に掲載されたとき、「やっとここまで来たか」と、ひとときの感慨にふけった。菅政権になるまで、遺骨帰還事業が新聞の1面に掲載される日が来るとは想像もしていなかったからだ。つまりはそれだけ地味な事業ということである。
硫黄島訪問は、単なるパフォーマンスと見る向きもあるかもしれない。しかしそれでも実際に足を運び、埋もれた戦没者の骨を拾い上げたのだ。近年、一国の首相としてここまで取り組んだ人はひとりもいない。そしてまた、硫黄島に1万数千人の遺骨がまだ残っていることに対し、「政治の不作為」と発言している。ごもっともである。よくぞ言ってくれた。

 もちろん遺骨帰還事業は硫黄島だけで終わってはならない。太平洋の島々にも、北方の大陸にも、戦没者たちは60余年前に倒れたときのままの姿で土に眠っている。あくまで推計だが、収容が可能な遺骨だけでも約60万柱。残された時間は少ない。硫黄島を足掛かりに地域を広げていっていただきたい。

 硫黄島は国内だが、これから先は相手国との交渉も必要になる。首相、“柳腰”外交では務まりませんぞ。不作為を繰り返さぬよう、事業の行く末を見守っていきたい。


                                (ジャーナリスト)