『光る君へ』第9回『遠くの国』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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※基本、ネタバレ有となっていますので、ご注意下さい。

藤原道長「この者たちは人をあやめてはおらぬ。生命まで取らずともよい」

直秀「凛々しいことだな、若君(嘲笑

 

 

 

藤原道長「検非違使……いや、五徳殿に引き渡せ」

 

 

 

 

 

直秀「待って、待って(必死

 

二年連続大河ドラマで非業の死を遂げた毎熊克哉さん。それでも、昨年は直接的には描かれなかったこの上なくむごいやり方と比べたら、多少はアレな最期であったのかも知れません。迷わず成仏してクレメンス。

前回までは『官憲に捕縛されたとはいえ、序盤からガッツリと三郎やまひろと絡んでいる直秀さんだから、都から追放された先でドサ回り中のまひろ親子と再会するんやろうなぁ』とタカを括っていたのですが、どことなく鰊蔵を思わせる牢といい、散楽メンバーの『俺、ここを出たら馴染みの女に会いに行くんだ……』というベッタベタな台詞といい、途中から『こんなん死ぬしかないやん』と思わせるフラグの連発で、鳥辺野というフレーズが出る前に色々と察してしまいました。『海の見える国へ行く』という直秀の台詞には補陀落渡海の意味を持たせていたのかも知れません。ゴーイングゴーイング、今日を旅立つ準備はいいかい?(羊文学風)。まぁ、オリキャラは惜しまれるうちに退場させるのが花であることは一昨年の善児で立証されているので、一つの潮時ではあったのでしょう。

 

ただ、肝心の直秀が『処分』されるに至る経緯や動機があまりにも不鮮明であったのも確かです。私的には、

 

三郎「いいか、処刑するなよ? 絶対に処刑するなよ?」

検非違使(処刑しろってことだな)お か の し た」

 

という貴族のボンボンに対するダチョウ俱楽部的過度な忖度と受け取りましたが、実況のコメントを読むと、

 

三郎「まひろは私の知り合いだ。この女は解放してくれ」

検非違使「あっ(察し)……貴方の女をかどわかした不逞な賊を始末しました」

三郎「ああああああああああああ(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!

 

という検非違使のゲスの勘繰りが生んだ悲劇という意見もあり、公式ガイドによると、

 

検非違使「いつもは腕の一本でもヘシ折って済ませるのに流刑地に送るの面倒クセーな……始末したほうが早えーわ」

 

という下級官吏の怠慢との情報もある。どれも何となく理解は出来るけれども、しかし、どれも単品では決定的な説得力に欠けるのよね。公式ガイドの情報が正しいのかもですが、それだとシンプルに官吏の怠慢が原因であって、三郎が自分の責任と受け取る理由としては弱い。手前味噌ですが、三郎に自分は気楽な三男坊でなく、大貴族藤原家の御曹司であるという自覚がなかった=下級官吏の斟酌を予想出来なかったほうが、自責の念に駆られて、自身の立場を自覚する契機になると思うのですよ。何れにせよ、ホンの一言二言でいいので手を下した検非違使サイドの動機を描いて欲しかった。直秀のように制作陣が推していたオリジナルキャラクターが、不鮮明な理由で片づけられてしまったのが痛い。鳥辺野のインパクトを強調したいあまりに直前まで情報を伏せておきたかったのかなぁ……いや、でも、その割に牢内で思いっきり死亡フラグ立てとるし。

 

しかし、それ以上の問題点は直秀の死が本筋と全く関係ないサイドストーリーで終わってしまったことなのよね。オリキャラを無理矢理史実に絡ませる必要はありませんが、全く史実と絡ませずに退場させるのも、それはそれでオリキャラを出す意味があるのかとの疑問を禁じ得ません。私的には直秀が早期に退場するとしたら、盗賊として忍び込んだ先で寛和の変の裏工作を何等かの形で知ってしまって、それで消されるんじゃあないかと予想していたので。まひろマッマのように死後にストーリーを牽引するポジションになる可能性もありますが、現時点で直秀は三郎とまひろの三角関係を描く以外に登場する意味があったのかという根源的な存在意義を問われる最期になってしまった訳ですよ。特に今回は兼家の詐病と彼の謀略の全容が明らかになる重要な内容であった分、あまりにも史実と無縁のオリジナルパートで構成され過ぎた鳥辺野イベントが浮いてしまった感は否めません。世間的には鳥辺野のインパクトが話題になっている今回ですが、私的には低評価。次回の『寛和の変』での挽回を期待。