芹沢慶二「残念ながら、シロ。三上の死亡時刻、磯田は自宅マンションのベランダで風呂上りの一杯を楽しんでいたらしい。それを向かいのマンションの住人が見ていたんだよ」
目撃者は青木君。間違いない。
いや、確実に違うと思いますが、殺人事件に関する重要な目撃者が向かいに住む住人というシチュエーションは、否が応でも青木君を思い出させます。今回登場しなかったのは、イタミンや芹沢君に絞られていた所為ではないでしょうか。そして、更なる警官嫌いに陥る無限ループ。出たら出たでイラッとする反面、登場しない時には物足りない青木君。何気に『相棒』のキャラクターの中でもベスト10に入る存在になりつつあります。少なくとも、杉下よりもランキングは上。そんなに杉下が嫌いか、俺。
先週はデッキの不調で録画失敗、先々週の西園寺君のリアルデジタルタト〇ー事件はイマイチな内容と、二週連続で感想を書かなかった『相棒』ですが、今週は普通に面白かったので記事にしました。トリックよりも事件全体の構図がストーリーの基幹となったので、本作はミステリではなく、純然たるサスペンスといえるでしょう。脚本は先季の佳作『共演者』を描いた坂上かつえさん。成程、納得。安定したベタなサスペンス路線でした。それでも、真作を贋作にすり替えたと思わせておいて、実は最初から同じ一点の贋作というトリックは予想の範囲内とはいえ、なかなか面白かったです。
反面、物語がオークション会場から始まる必然性は弱かったかなぁ。三上史郎が自らの画を駄作と喚き散らすシーンも含めて、杉下を事件と絡めるという目的ありきの印象を受けましたし。米沢さんの卒業で特命係が簡単に事件に首を突っ込めなくなったことを表しているのかもですが、無名の画家の風景画しか所有していない杉下がオークション会場に出入りしているのも不自然。以前、カイトパパにオークションの世界にコネを作って貰っていたので、その恩恵に預かっているのかも知れません。
真犯人は予想通りにして、意外の極み。杉下と冠城君の会話で済ませていい過去の事件を映像として出した段階で、充分に怪しかったのですが……何というか、その……『相棒』はそういう話じゃあないだろう。メインゲストの二人が二人とも概ね無罪で、如何にも腹にイツモツという連中が普通に逮捕されたのは、或る意味で救いがあり過ぎる結末でした。判りやすい勧善懲悪モノのノリでしたね。ヘタに捻り過ぎるのも考えものとはいえ、もう少し、やるせない雰囲気が欲しかったのも事実です。そうはいっても、典型的な真野脚本のように『一から十まで救いのない話』というのも見ていてシンドイので、この辺の匙加減は微妙ですなぁ。
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