『真田丸』第44回『築城』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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真田幸村(兜が)シカでした」

 

OPテーマをEDに持ってくるという深夜アニメの終盤さながらの構成と、主人公の『真田丸よ!』というドヤ顔全開の台詞で、遂に物語が最終章に突入したことを高らかに宣言した大河ドラマ『真田丸』。尤も、合戦の本番回には定評のない三谷作品ですので、冒頭の台詞の元ネタのように竜頭蛇尾で終わらないことを祈るばかりです。今週は特にパッとした場面のない内容でしたが、これは先回と次回を盛りあげるための『繋ぎ』と思うことにしましょう。ラストでOPテーマがかかった時には、このまま次回分を放送して欲しいと真剣に願いました。単品としては物足りないものの、前フリや前菜としては概ね及第点。これで来週までお預けというのはツライ。尤も、職場の諸事情で感想記事は若干短めです。リアル職場でリアル大蔵卿局リアル有楽斎に振り回される日々は本当につらい。気分は真田幸村……とまではいかなくても、充分に大野治長の心境で送る今週の『真田丸』のポイントは4つ。

 

 

1.兄の心 弟知らず

 

堀田作兵衛「源二郎さま、江戸を発つ前にすえに仮祝言をあげさせて参りました」

 

先に言うべきことがあるんじゃあないのか、作兵衛。

 

お兄ちゃんの温情(?)で幸村の元に馳せ参じることが出来たにも拘わらず、口を拭って知らんぷりを貫く作兵衛。有楽斎とは別の意味で結構なド畜生ですね。自分の代わりにすえを育ててくれたことへの感謝の言葉とはいえ、幸村の『苦労をかけたな』という台詞はお兄ちゃんにこそ、向けられるべきでしょう。敵軍に六文銭が翻るのを見たら弟の目が曇るとの思いで、お松さんを内々の使者に差し向けたお兄ちゃんでしたが、弟のほうは、

 

真田幸村「全ては運命じゃ」

 

の一言で片づける始末。何ともクールドライな叔父上。万一、甥っ子が真田丸攻略に現れても、顔色一つ変えずに狙撃しそう。お兄ちゃんの善意は今回も空回りでした。

尤も、そのお兄ちゃんも江戸に招いたお通さんとアバンチュールな日々を満喫している模様。同じ女性相手でも茶々に四苦八苦している幸村が知ったら、

 

真田信之「妻に内緒で九度山の父たちに仕送りを続けた」

真田幸村「蕎麦の実とか蕎麦の実とか蕎麦の実とかね」

 

とイヤミの一つでも口にしそう。しかし、お通さんの『心が穏やかになる香』とか……これ以上、お兄ちゃんの心が穏やかになったらどうなってしまうのか。聖人とか生き仏とかいうレベルで収まらない境地に達してしまいそう。まぁ、そのお香の所為で稲に怪しまれているので、その境地に到達することはないでしょう。残念。

 

 

2.今週のMVP

 

大角与左衛門「明石の上物が手に入った……アンタ、戻ってくると思っていたよ」コトッ

 

『明石のタコ』さんの大河デビュー(違)のシーンに登場した炎の料理人(物理)の大角与左衛門。与左衛門が出たということは大坂城炎上に至る過程もやるのかも知れませんが、そこまでの尺が余っているのか、非常に不安です。こういう形で登場させたからには、何らかの救済措置というか、已むを得ざる失火という流れにしないとイカンのじゃあないかな。

さて、先週に引き続き、大阪城内の人間関係が主体となって描かれた今週のMVPは3人。一人目は毛利勝永。大坂の牢人五人衆の中では主人公を除いて……否、時には主人公以上に存在感があります。幸村の策が退けられた時の、

 

毛利勝永「もういい、俺は降りた」

 

という台詞に又兵衛と盛親が雷同する辺り、そして、先週の幸村の作戦に最初に賛成したように、何気に五人衆の中で主導権を発揮しているのはコイツなんだよなぁ。幸村=主人公、又兵衛=死にたがり、明石=切支丹、盛親=優しい髭といった具合に、他のメンツがそれぞれに独自のキャラクターを有する中、現時点での勝永には目立った特徴がありませんが、しかし、一歩下がった場所から五人衆の動きをコントロールするのは常に勝永。こういう奴が一番頼りになるんだよなぁ。上記の台詞も、ブツクサと文句をいいながらも、結局はルパンを助けてくれる次元大介のようですし。

二人目は大野治長。真田丸築城に関する言動の表面を追うとブレブレ度が半端ないのですが、治長の場合はそれなりに力を尽くしたが及ばなかった感が伝わってくる分、好感度高いです。胡散く斎の鶴の一声で真田丸の築城が中止に追い込まれた時も、さりげなく、幸村に詫びていました。勿論、食言の誹りは免れ得ないでしょうけれども、この一言が出てくるか否かが治長と治部の違いでしょう。少なくとも、コミュ障ではない。そして、最終的には秀頼の鶴の一声で真田丸の築城が成る辺り、片桐且元のような不運体質でもなさそう。経綸の才では治部に及ばず、徳川方からの信頼度では且元に及ばない治長ですが、この両名にはない第三の豊臣家ナンバー2像になっていると思います。でも、演じておられるのが今井さんという段階で、油断は禁物。ぶっちゃけ、家康に情報を流しているのがコイツという可能性も否定できませんので。

そして、三人目は木村重成。先週の幸村との絡み辺りから、徐々に五将との絆を深めていっております。中の人はライダーでしたが、本作では大坂戦隊の6人目の追加メンバーに内定した模様。何気に将来性も高そうですし……まぁ、将来なんかないんですけれども、後藤又兵衛とつるんで歩く場面はニヤリとさせられます。その後藤又兵衛。今までは哀川翔さんご本人であると割り切るしかないと思っていたのですが、よく見たらモハメド・ヨネにも似ているんだよなぁ。ますます、後藤又兵衛のイメージから乖離していく……。

 

 

3.二代目(本人)

 

阿国「それ、ひょっとしたら先代のことかも? 昔、先代が拾ってきた踊りの下手な女子がいて、実は何処かの大名の娘か何かで……」

「私のことです!」

 

まさかの阿国さん再登場! この時点ではOPがなかったのは、彼女の登場の衝撃を際立たせるためかと思いました。しかも、二代目ということで、先代と同じシルビア・グラブさんが担当。これは服部半蔵と同じパターンですが、そうなるとお松さんの容貌が全然変わらないことと辻褄が合わないような気がします。まぁ、実際、出雲の阿国も活動時期から推察して、一人ではなく、二代目を襲名した者がいたという説があるので、筋は通っています。でも、陣中に出入りできる例外的な女性との縁で、お松さんがお兄ちゃんの言葉を伝えるのは筋が通っているとしても、そこまでして再登場させなきゃいけない話でもなかったように思います。上記のように幸村は甥っ子の出陣を然程気に留めてもいませんでしたので。

何よりも、あのそそっかしいお松さんがキチンとお兄ちゃんの言葉を伝えられたことに違和感あった。絶対に徳川方に漏れてひと騒動という展開になると思っていましたので。そう考えると今回のお松さん関係の場面は本当に必要なのかという疑問も湧いてきますが、こういうのがのちのちの伏線になるかも知れないのが『真田丸』なんだよなぁ。

 

 

4.御屋形様の憂鬱

 

伊達政宗「集まった牢人衆の中には真田左衛門佐もおるとか」

上杉景勝「……源二郎が?」

伊達政宗「わざわざ、幽閉先を抜け出して、秀頼の呼びかけに応じたとか……愚か者ですな」

 

久々に耳にした愛しの愛しの源二郎の消息に愕然となる御屋形様。『死にざまは生き様を映す鏡』とか『わしのようにはなるな』とか吹き込んじゃった影響で、源二郎が大坂城に入ったのではないかと後悔しているのでしょう。この場に兼続がいてよかった。お目付け役がいなかったら、御屋形様は家康の眼前で、

 

上杉景勝「わ、わしは大阪方に味方する!(半泣き半ギレ

 

とかエエ恰好しいの出来もしない台詞を口走りかねませんからね。元来、政宗とはソリの合わない兼続。御屋形様の心労を増やすようなことを囁いた政宗に対する更なる敵愾心を燃やしたと思われます。『大御所様の御召しとあらば、この伊達政宗、どこへでも参上仕る!』との政宗の言葉に、

 

直江兼続(言葉通り、家康がくたばったら一緒に冥途にいけばいいのに)

 

と思ったに違いありませんが、そういう奴が一番長生きするのが世の不条理。憎まれっ子世に憚るという奴です。尤も、のちの展開で伊達家が幸村の息女を引き取る訳ですから、このまま、単なる大御所の幇間で終わることもないでしょう。でも、引き取ったのは片倉小十郎(子)の独断で、政宗は関知しなかったという展開もあるかも。

 

この場面の直後に大阪城内への舞台は映るのですが、その対比が今週の妙でしたね。ほぼほぼ勝ち戦確定の徳川軍のほうが後ろめたさや陰鬱な雰囲気が出ていた反面、敗色濃厚の大坂城は異様な活気に満ちていました。実際、大坂攻めは諸大名にとっては旧主に背く戦いであり、勝っても禄高が増える訳でもなく、しかし、手を抜くと幕府に睨まれるという、やる気の出ないことこのうえない戦いでしたから、描写としては適切でしょう。勿論、豊家内部も一枚岩でないのは今回描かれた通り。先回は牢人同士の敵対関係を解消する話であったのに対して、今回は首脳部と牢人衆の軋轢は秀頼の例外的措置で終息をみたものの、火種が燻ぶったままなのも確か。特に家康の元に情報を漏洩させている存在は誰なのか。密書の署名が隠されていた(或いは記されていても偽名でしょう)ので、シカとは判りませんが、

 

本命……織田有楽斎

対抗……小幡勘兵衛

抑え……大野治長

穴………大角与左衛門

大穴……茶々

 

辺りが考えられます。でも、勘兵衛は未登場だからなぁ……まぁ、関ケ原を総スルーした三谷さんのことですから、肝心の内通者を登場させないままで終わらせる可能性も充分有り得る。