海王星で無になれば part.9 |  ZEPHYR

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― the field for the study of astrology and original novels ―
 作家として
 占星術研究家として
 家族を持つ一人の男として
 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

 孝司は今まで占いなど信じたことはなかった。

 いや、深く考えたことがなかった。
 それでも、どちらかと言えば、いかがわしいものだと思っていた。

 しかし、この老人の言葉は、あまりにも今の自分にはリアル過ぎた。

「そんなに厳しいときなんですか、今は」

 表面上は、平静さを保って言った。

「そのはずです。例外はありますがね」

「例外?」

「あなたがこの海王星と冥王星の力を、別な使い方をしていれば、話は違ってきます」

「どういうことでしょう」

「たとえば、冥王星は破壊と創造の星で、通常はこの『破壊』ということが強く現れます。しかし、その後の再生も意味します。つまりここで、やり直す、生き直すと言ったこともできるのです」

「なるほど。えっと、このもう一つの星……海王星でしたっけ。これは?」

「うーん。この星の説明をする前に、あなたと少しお話をさせて頂いて良いですか」

「え? はあ」

「あなたはお仕事は何をされてますか」

「ガソリン・スタンドで働いています」

「なるほど」

 老人は納得した、とでも言うように大きくうなずいた。

「なにか?」

「この図面、これはホロスコープというのですが、あなたの人生の傾向を表現しています。もちろん、ここからあなたの職業なども推理することはできるのです」

「ガソリン・スタンドで働くことが出ていたんですか?」

 そんなもの、聞いた後ならなんでも言えるではないかと思った。

 が。

「あなたの職業として現れそうな星は二つあります。火星と海王星です」

 老人はホロスコープの上の方にある、二つの星をそれぞれに指さした。

「火星はいろんな意味がありますが、機械などのメカニックなものやシステム的なもの、自動車やバイク、火や熱に関連したコックや消防士、また他にスポーツなども火星の意味にあります」

 自動車。機械。

「ところがこの火星は、コンディションがもう一つ良くない。そのため思うように使えない可能性もあるし、これでやっていくには大変な努力も苦労も必要とされるでしょう。
 そこで、もう一つの星、海王星なのです。

 海王星には石油という意味もあります」

 鳥肌が立った。
 老人の言っていることは、そのまま孝司の人生の軌跡、そのままだった。

 偶然、こんなことが言えるだろうか?

 孝司はあらためて老人を見つめた。

 きわめて淡々としている。

「もちろん、海王星には他にも意味があります。医療関係とか薬品関係はおもにこれですし、水商売、石油と同じように液体や水に関係した仕事に関わる人間もいます。
 あなたの場合は、おそらくこの簡単には使えない火星の影響もあって、自動車に近いところにある液体、石油を売る仕事に傾いたのではないかと思われます」

「…………」

 うまく言葉が出なかった。

「しかし、これであなたにとって海王星は、ただの『無化』の星ではないことが分かりました」

「というと?」

「あなたはすでに海王星を使っているわけです。仕事として」



この物語はフィクションです。