Jin-仁-を完読して |  ZEPHYR

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― the field for the study of astrology and original novels ―
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 家族を持つ一人の男として
 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

村上もとかさんの漫画「Jin-仁-」を、しばらく前に読み終えました。

前にも書いたのですが、村上さんの漫画の昔からの大ファンです。

「赤いペガサス」「風を抜け」「龍-RON-」といった長いものばかりではなく、ちょっとした短編などにもきっちりとしたストーリーとテーマがあり、魅了されます。

「Jin」に関してはTVドラマにもなり、大ヒットしました。
なので、ここで私がそのおもしろさやストーリーをあれこれ語る必要などないと思います。

原作漫画とTVではストーリーも細部では異なっていて、結末も違います。

江戸時代にタイムスリップした現代の外科医。
その奇跡的な軌跡を描く。

タイムパラドックスへの解釈の仕方もありますし、こういうものは幾通りもの結末があって当然でしょう。

個人的には原作のラストの方が好き、かな?

しかし、TV版も「なるほど」と唸りました。

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TVシリーズの脚本を手がけたのは、森下佳子さん。

すばらしい脚本家だと思います。

あのシリーズの間、幾度、涙を誘われ、幾度感嘆させられたか。

リアルな幕末の歴史。
そこに南方仁という異物を放り込んで、一つの流れに取り込んでいく。

漫画原作の良さを抽出し、うまくつなげていく手練の技。

本屋で「Jin」の「完全シナリオ&ドキュメントブック」というのを見つけたので、衝動買いしてしまいましたが(笑)。
この方のシナリオのすばらしさは、ざっと目を通しても伝わってきます。

この全ストーリーのシナリオが収録されたドキュメントブックは、私の宝となるやもしれません。

たぶん近い将来、またかならず脚本を書くときが来る。

そのときのために。


最後に一つだけ。

江戸時代に放り込まれて、運命に翻弄されながらも必死に「仁の道」を生きた医師。

宇宙、世界全体という巨大なものと対峙しながら、自分のできることを問いかけ、やり続けた主人公の生き様には、良質なSF作品にも通じる不思議な感動を覚えます。小松左京先生は亡くなってしまいましたが……。

たしかにこれはSF的です。

でも、そこに私たち自身のことも、見えてくる。

なにかがはね返ってくる。

真に巨大な自然や宇宙というものに対峙しながら、私たちも生きている。

ちっぽけだけど。

だけど、人間は生きている。

そして個々は小さいけれど、流れとして大きなものを作り出す力がある。

決して無意味でもないし、無でもない。

私たち一人一人が、ちっぽけだけど、無ではない。

ここでする小さな何かが、やがて大きなな何かを生み出すかもしれない。
バタフライ効果のように。

それでいい。

そんなことも感じさせてくれた漫画とドラマでした。

感謝。