蠍座的な生きがい |  ZEPHYR

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 占星術研究家として
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 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

「そうよ、わったっしは、蠍座のおんな~♪」
という唄で知られる蠍座の女は、執念深く、嫉妬深い、情の濃い女の代表格として、何となく世間的にも認識されています。
これは本当のことでしょうか?
本当だとすれば、それはいったいこの星座のどういうところから生じるのでしょうか?
そして蠍座の「生きがい」=「生きているはりあい」「生きていて良かったと思うこと」とはなんなのでしょうか?

星座別生きがい論、8番目は蠍座です。
蠍座は女性星座。
フッィクスド・サイン(不動宮)。
水のエレメント星座。
そしてこの星座の支配星は、冥王星です。

最初に申し上げておきますと、この蠍座論は、今までのよりもやや長くなります。
それだけ難しい星座なのです。

カーディナル(活動)→フィックスド(不動)→ミュータブル(柔軟)という流れは、「創造」→「維持」→「破壊」という流れだとご説明しました。
蠍座は水のエレメントで、「情」に関わっています。
蠍座の前に存在する水のエレメントは蟹座ですが、これはカーディナル・サインで、「情」を「生み出す」作用を強く持っていました。ここが蟹座が母性の星座となるポイントなのですが、蠍座はこの「情」を維持しよう、捕まえておこうとします。
そして蠍座は、「あなたと私」(天秤座)の後に位置する星座です。
当然、配偶者やもっとも身近な相手との関係を維持しようとするわけです。

牡羊座は1ハウスが定位置で、これは「自分」です。
牡牛座は2ハウスが定位置で、これは「自分」が「所有するもの」です。
7ハウスと8ハウスはそれぞれ1ハウスと2ハウスの対向に位置していて、7が「配偶者」、8は「配偶者の所有するもの」という形に変化します。
この8ハウスが定位置である蠍座は、じつに複雑な深層心理を持っていると、私は考えます。

たとえば太陽が蠍座に入っている人(一般的に言う蠍座生まれの人)は、配偶者の所有するものの目録の中に自分自身を入れているようなものなのです。
つまり最初から「運命の人」を想定し、その運命の人のものとなること(一体化すること)を、自分自身の意識の底では願っているようなところがある、と解読することができるのです。

かなり以前ですが、私は所有欲の強い星座は、牡牛座と蠍座があるというような記事を書いたことがあります。
牡牛座はどちらかというと「自分」に主体があるので、「自分が所有する」ということ執着があるのですが、たとえば配偶者に対する態度でも、あくまでも自分と配偶者は別存在であり、だからこそ「所有する」という執着にもなってゆきます。
ところが、蠍座は主体を相手に渡しているようなところがあり、むしろ自分が相手に所有されることに喜びを感じるかも知れないのです。これは100%です。自分の中の半分とか、10%20%とか、そんな割合の話は蠍座にはありません。
自分のすべてを相手にゆだね、溶け込ませるような愛です。
ここが牡牛座との大きな違いで、牡牛座は相手と自分を別人格と認識しているのですが、蠍座は相手との完全な合一を願っている星座だと考えることができます。

あなたと私は一つ。
一体のもの。
ゆえに別れはあり得ない。
それは身が裂かれるのと同じこと。
だからこそ、相手の離反は許せない。
裏切りは絶対に許さない。
地獄の果てまでついて行く……。

こうした流れの果てに、蠍座は世間で言われるような情が濃く、嫉妬深い星座という性格を帯びてゆくのです(星座論です。個体の話ではありません。個人の愛のありようなどは、個人チャートを作らないと判定できません)。

蠍座の支配星である冥王星は、「絶滅」「絶対」などというキイワードがついて回るような、極限的な性格を持つ星です。
極端なのです。
好きなら好き。嫌いなのは嫌い。
愛ならば100%ください。あなたの中の50%とか70%じゃ嫌です。
しぼりつくすくらい全部ください。
中間は嫌です。灰色とかないです。白か黒か。それが私の世界観!
これが冥王星です。

時折、鑑定で金星が冥王星と強い関係を持つ女性にお目にかかることがあります。
たいがい、メーターが振り切れています。
相手がびっくりして尻込みするくらい、超高温の愛情を燃焼させています。
冥王星は関わった星の力を極限まで引き出そうとする星ですから、金星(愛)が関わるとこのようなことになるのです。

冥王星は死と再生の星、破壊と創造の星でもあります。
これも極端です。
8ハウスは「死の部屋」でもあります。
冥王星を支配星に持ち、8ハウスが定位置の蠍座は、この人生の中でこのような身も心を燃やしつくし、死に至り、そこから再生するような体験を、潜在的には望んでいます。もちろん個体差はありますが、本質的にはこのような性向を持っているはずです。
8ハウスや蠍座は「性」に関わるポイントでもあるのですが、なぜ占星術上、ここがセックスに関連した場所なのかというと、私たちが生きてこの世に存在している間には、「死」は一度しか起きません。死んだら終わり、ゲームオーバーです。ところが生きながら「死」を体験できるような瞬間が、セックスという行為の中にはあり、そこで絶対的な自己の死と再生を体験できるのです。

8ハウスに重要な星が入り、ハードアスペクトが多い女性には、よく性や異性関係の問題でつまずいている方を見かけます。これは本当に馬鹿にならない確率で存在しています。もちろん、男性も例外ではありません。
これは結局、麻薬に手を出す感覚に似ていると考えられます(冥王星には「劇薬」「麻薬」などの意味もある)。
危ない。だけど、これを体験したら、もうやめられない。
そんな非常に危険な体験への熱望が底にあるためだと考えられます。
これも死と紙一重の究極的体験への潜在的な願望があるためと言えるでしょう。

長くなりましたが、こんな蠍座的な人の生きがいとは何でしょうか?
言うまでもないですよね。
より分かりやすく、現実的な言い方で表現すると、「愛する人と身も心も完全にひとつになれるとき」こそが、蠍座の生きがいなのではないでしょうか。
刹那的にはそれはセックスであったりするかも知れません。
しかし、それは物事の本質部分ではありません。
精神的な領域も含み、存在全体で愛する人と自分が一体であると感じられるとき、なのです。

この一つ手前の天秤座では、「私」と「あなた」の関係が調和されることが何よりも重要でした。
魂における蠍座のプロセスでは、手を取り合ったその相手と完全な一体化を遂げることで、安心と生まれ変わることを得、さらにその先へと続く、より広く深い世界(射手座)へと飛翔する手がかりを得るのです。

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