この種の企画には、かならずクライアントというものがあり、そこの要望というものが作品制作にかならず絡んできます。
ご当地の名産品や土地を取り上げてほしいというのは、まあ、普通です。
以前、福井県全県のミステリーを市町村課からの依頼で書いたときには、とんでもない要望が絶対条件としてつけられていました。
「県内から死体を出さないでください」
え?
県内からって……私が書くの、推理小説ですよ? 死体はだいたいつきものですし、取り上げるのは福井県でしょ? 福井県の話を書くのに、死体はよそ?
それって、きびしくね?
ほかにも福井県のエリアを四つに分け、そのエリア一つずつからかならず土地が土地の名産品を二つ取り上げてほしいという条件もつけられていました。
原稿用紙でたった100枚の物語なのに。
当時の私には、チョー難題でした。
この二つの条件をクリアする、ストーリーの基本骨子を考え出すまでに、ストレスから二度も吐きました。
今ならそんなことないんですけどね。
今回の企画でも、やや同質な条件があり、しかも福井のときと違って、扱うものが歴史的です。
復元されているものもあるのですが、99%現存しないものなのです。
なんとなく予測はしていたのですが、昨日のロケハンを通じて……
「これ、予想以上に難物ですよ」
予測は現実の感想となっていました。ロケ地を移動する車の中で、ずーっっっと、私は「うーん……」と内心うなり続けていました。
それでも

夕飯をスタッフと食べながら、ミーティングしていたとき、ピカッと頭にひらめきました。
「こういうストーリーなら、課題となっているものも全解決できるんじゃないか……」
十二分に面白く、読者・参加者を引きつける内容です。
とりあえずプロットの一案としてキープ。
しかし、これがあるのとないのとでは、今後のロケハンも違ってきます。なにもないと、気分的にも切迫感が出てきますし、焦りにつながります。
スタッフも安堵した模様。
ホテルに入り、温泉のお風呂を浴びてきて、妻に電話で報告すると、
「さっすが、パパちゃん

とお褒め頂きました。とりあえず語尾にハートマークが付いているような印象でした。
私のひらめきというよりも、たぶんどっかから助けが入ってるんですよね。
そんな気がします。
私はじつは結構バホタレですから。
でも、こういう企画のロケハンのとき、かならずなんとかなるという不思議な自信のような、妙な確信があるんですよね。
信頼といってもいいか。
そのどっかにも感謝しなければ。
今朝は、ホテルの多彩なバイキング朝食の中から、茶がゆなどを中心にした和食をいただいてきました。
私だけ、宿泊施設もかなり厚遇されています。
ホテルのスタッフが親切だし、大浴場は温泉、施設はちょっと古いタイプですが、きれいで豪華です。
他のスタッフはもっとシンプルなホテルだと思う……。
きちっと対応してくれている関係者、スタッフのためにも、良い作品に仕上げなければ。
さて、今日もがんばって行ってみよう。
