「邪馬台国発見」を読了 |  ZEPHYR

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ジョー・マクモニーグルについては、ご存じの方も多いでしょう。
TVの特番などで、度々、FBI超能力捜査官として登場し、リモート・ビューイングという手法で難事件の解決や行方不明者の捜索を行っている人物です。芸人・田村の失踪していた父親を、その透視能力で見事に捜し出したというのは、特番を記憶に留めていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
リモート・ビューイングは日本語では遠隔透視と訳されています。神通力の千里眼、超能力の透視能力ともやや異なる、独特の方法論に基づいた、やはり透視能力の一種です。
この力は、マクモニーグル氏がアメリカ陸軍に籍を置いていたとき、超能力開発に関わる極秘計画「スターゲイト・プロジェクト」によって開発されたもので、もともとは軍事利用が目的だったようです。
氏は退役後、このリモート・ビューイングによってFBIの捜査に協力し、数々の実績を上げてきたという話です(ですから、厳密にはFBI捜査官ではありません。そういうレッテルが一人歩きしているだけです)。
リモート・ビューイングは独特のルールに基づいて行われる透視で、マクモニーグル氏によればだれもが持つ能力で、訓練と開発次第で、それは開花するそうです。

このリモート・ビューイングの真贋について、ここでは棚上げしておきます。
FBIで事件を解決した実績、日本のTV特番で見せた能力など、すべてがイカサマだとする疑うことは可能です。どこまでも本気で疑うなら、自分の目の前でトリックなど存在する余地なく、その能力を示してもらうしかありません。
私は個人的には氏の業績のすべてをイカサマ師が作り上げるのは、おそらく不可能ではないかと思います。それにはFBIという組織を含んだ大がかりなペテンが必要になってきます。
日本の視聴率第一主義のTV番組制作者の中には、高視聴率を取るためにはおそらく魂を悪魔に売り渡すことすらいとわない人間も存在すると思いますから、その評価は保留しておくにしても。

そうした論争はすべて棚上げして、ここで取り上げたいのは、マクモニーグル氏が今回、リモート・ビューイングを使って、あの邪馬台国と卑弥呼を透視し、出されてきた驚くべき結論と興味深い内容について、どうしても触れたくなったからです。

「邪馬台国発見」はそうした内容です。
邪馬台国はどこにあったのか、そして卑弥呼はどんな女性だったか。
これについては、ネタ晴らしは避けたいと思います。これから読もうと思っていらっしゃる方の興味をそぐことはしたくないからです。
ただ、その透視結果はとんでもないものであり、想像を絶した部分がありました。卑弥呼の出身地など、これがもしペテンの創作物であれば、絶対にそんなところは選ばないだろうというものでした(逆に、それが信用度を高めているとも言えるでしょう)。

私がもっとも興味を持ったのが、卑弥呼が女王に据えられた経緯と、彼女が日本の黎明期に果たした役割でした。
マクモニーグル氏によれば、当時の日本では諍いが多く、部族間の衝突もかなりあったようです(倭の大乱という中国の記述もあります)。
そんな中で、やはり彼女は傑出した霊能力者というのか呪術師というのか、シャーマンだったようです。彼女の能力を聞き及んだ人間が遠路、意見を聞くために訪れていたようです。
そんな中、当時の日本の中でも有力で、諍いを起こしていた三つの氏族があり、「これをやめなければ世界を闇が覆い、多くの者が死ぬ」と卑弥呼が予言したことが契機となり、彼女をいっそ女王としてすべての部族連合の長に置こうという動きが生じた……。

卑弥呼の氏族は海の民でもあり、当時の交易などでもかなり有利な地位にあったようです。鉄文化、そして稲作技術をも、本格的に日本に導入し、それが初期の大和朝廷へとつながっていったようです。
稲作は当時すでに各地で始まっていましたが、マクモニーグルの透視によると、まだそれほど大きな規模にはなっておらず、人口を養ったり、経済として流通させたりというレベルには達していなかったようです。
彼女が大きな役割を果たすことで、日本は国家としての礎が築かれたと言えそうです。

マクモニーグル氏の意見では、卑弥呼は「当時の日本での信仰や、良き風や気候、良き米作りやそれに伴う共同作業など、多くの人に役立ち、人の幸せにつながる理解を深め、広めた」ようです。
ならば、まさに日本という国にとって、卑弥呼は潜在意識的には「母」のような存在です。
だからこそ、我々日本人は邪馬台国ミステリーと卑弥呼の謎に、こんなにも心惹かれてしまうのかも知れません。

マクモニーグル氏の透視の真偽がどうであろうと、これを一つの物語として読んでも良いと思う。彼の解読した歴史を、一つのありそうな物語として理解しても。
そうしてみれば、バラバラであった倭の国々が、いかにして統合していったのか、そのために何が必要だったのか、私たちは知ることができます。

それは第一に、安定した豊かな暮らしです。
貧困の中、飢えて、今日食べるものもない少年に、盗みはいけないなどと説教するのはナンセンスです。部族の死活問題で良き土地を奪おうとする首長に、刃を向けるなと説いても、言うことを聞くとは思えません。
憲法が我々日本人に最低限の生活を保障しているように、世界中の人々にこれは保障されるべきです。彼らの食べるもの、彼らが使うエネルギー。
これらは先進国と呼ばれている国々が、軍事費をほんのわずか削減するだけで、まかなうことができます。
戦争準備費用が、そんなにも必要なのでしょうか?

大地に根ざし、食べるものを確保する。
この基本的で重大な作業を共同で行うことを通じて、人は他人を思いやることを知り、互いの手が互いを養うことを知った……。

今、世界にも「卑弥呼」が必要なのかも知れません。

尚、マクモニーグル氏の透視結果は、欠損した日本史の空白を埋める形で、じつに興味深いものばかりでした。
『記紀』のいう、神武以来の初期の天皇家と、卑弥呼がどのように関わるのか、まだ謎は多いですが、氏の透視した古代日本の氏族分布などによれば、有力な氏族が畿内から北陸にかけて存在したようです。
継体天皇など北陸の出身ですが、普通に日本書紀を読んでいると、「なぜ北陸から?」という素朴な疑問が湧きます。
黎明期の天皇家の系譜は、そうした複数の有力氏族の代表者が交代で首長の座についていたのかもしれません。
また前方後円墳は、今言われているよりさらに築造時期が遡るようです。
このあたりも真実なら、日本の歴史を大きく書き換えることになります。

今後も氏が継続した透視を行い、日本黎明期の真相を浮かび上がらせてくれることに期待します。