息子へ。
昨日と今日で、とうとう公立高校の入試が終わりましたね。
この半年ほどの君のがんばりは、たいしたものでした。勉強は決して得意ではないけれど、必死になって机に向かっていましたね。
父は君を誇りに思います。
努力の成果が実って、公立へ入学できればいいですが、仮に私立へ行くことになっても、君のがんばりを見てきた私たちは、どんな結果でももういいのです。
君がこの世に誕生して、早15年。
身長ではわずかに及ばないものの、もう体格では父に勝っている。
いつの間にこんなに、でかくなりやがったんだろう、なんて思います。
思えば、君を育てるに当たって、父母には一つの後悔があります。
それは小さな頃、あまり君を構ってやれなかったこと。
君が生まれてしばらくして、お姉ちゃんの膝が悪くなりました。
関節が腫れ、曲げ伸ばしもできない状態で固まってしまい、医者に診せても「原因不明」「手術するしかないが、しても完治するかどうか分からない」という返答。
私たち夫婦は、東洋的な治療を選択しましたが、毎日毎日、その治療のために何時間という時を割き(君をいっしょに連れ歩き)、治療費は膨大なものとなり、生活を脅かされる中、私は勤めの仕事を増やし、家内も無理して働くという悪循環が何年も続きました。
お姉ちゃんは小さい頃、絵本を数え切れないほど読んで聞かせてやったのに、君はテレビやビデオにお守りしてもらったようなところがあります。
おじいちゃんやおばあちゃんにも結果的に頼ることも多く、どうしようもないがんじがらめの状態で、心ならずも君にあまり構ってやることができませんでした。
なるべくいっしょにいようとしましたが、やはりお姉ちゃんの時と比べると、あまり密な時間は過ごせていません。
しかし、どんなときでも笑いのある、みんなでいるときには和やかに過ごせる家であることだけは、なんとか死守してきたつもりでいます(全部できたとはとても言えないけれど)。
私が遊戯王のカードゲームにはまったのも、半分は君たちと同じ楽しみを共有できる時間を取り戻すためでした。
カードゲームなどくだらないという人もいるかも知れませんが、いっしょに遊べるものがあることで、ずいぶんと父と子の距離は縮まり、それを実感したときに私は嬉しく思いました。
祖父母のいる家庭環境、そして地元の過疎の小学校に通ったことが大きかったのか(全校で十数人しかいないその学校では、先生ともマンツーマン、上級生は下級生の面倒を見るのが当たり前という、大家族みたいな学校)、はたまた天性のものか、君はとても優しい子に育ちました。
君の優しさが、君の何よりの美点であると、私たちは知っています。
ある程度大きくなってくると、親はもう子供に対して、見守る、話を聞く、アドバイスをする、くらいのことしかできなくなってきます。
しかし、君への愛は今も、昔も、変わることがない。
どんなときでも私たちは君を見守っている。
だから、どうか自分の人生をおおらかに生きていって欲しい。
父母よりの願いです。