冥王星の本質に関する考察 |  ZEPHYR

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― the field for the study of astrology and original novels ―
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 占星術研究家として
 家族を持つ一人の男として
 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

名は体を表すという言葉がある。
占星術の世界でも同じで、それぞれの惑星には神の名が与えられている。
水星=マーキュリー(ヘルメス)
金星=ビーナス(アフロディーテ)
火星=マーズ(アレース)
木星=ジュピター(ゼウス)
土星=サターン(クロノス)
天王星=ウラノス
海王星=ネプチューン(ポセイドン)
冥王星=プルートー(ハデス)
( )内はギリシア神話名。ウラノスのみ、共通。

これら神々の名はギリシア神話に由来している。
星々の名付けの由来は、それぞれにあるが、なぜかこれらの神々の名が与えられたとき、シンクロニシティー的にその神々の性格までもが星に付与される。
そんな馬鹿なと思われるかも知れないが、人の姓名にも運命的な意味があることを考えると、星の名にも意味があって当然だろう。私は人の名前を数値化する占術である数秘術を使って取った合計二百数十人の名に、有意の偏りがあるのを確認している。

ましてや、神話は人類の種としての集合無意識が具現化したもの。
その象徴には、侮れない意味があるのだろう。

火星の占星術的解釈は、戦争、火、男性原理などだが、これはマーズの保つ神格そのものでもある。
ギリシア神話世界の最高神ゼウス=ジュピターは、太陽系最大の惑星、木星にその名を与え、最高の権威と栄光を輝かせるそのままに、もっとも幸運な星、拡大と繁殖の星となっている。

冥王星もその名を与えられたとき、ハデスと同じ性格を備えたと考えられる。
冥府の神、地底、地下の神、復讐と嫉妬の神、略奪の神、死と再生の神。
冥王星はギリシア神話のハデス=プルートーと同じ質をもっている。

問題はこの冥王星が、今や惑星から降格されてしまっていることだ。
惑星ではなくなった冥王星は、その力を低下させることはないのか?
降格されて以後、冥王星の活動はどのように変化するのか、それともしないのか。

これは占星術師の近年のテーマの一つである。
私は個人的にこのテーマに、一つの仮説を見出した。
それはギリシア神話をひもとくことで解かれる。

原初、カオス(混沌)があった。
そこからガイア(大地)とウラノス(天)が分かたれ、この二つが交わることで、世界と大勢の神々が産み落とされていった(この経緯は、日本神話のイザナギ・イザナミ夫婦神による国生みと似ている)。
やがてガイアが怪物を産み落とし始めたとき、ウラノス(天王星)はこれを快く思わず、怪物たちを地の底へ幽閉してしまう。
これに反撥したガイアは、子供たちを唆し、父を排するように促す。これに応えたのが末子クロノス(土星)で、彼は父の陽物、すなわち男根を切り捨て、父に代わって支配者になる。
しかし、クロノスは自分と同じく、わが子によって王位を奪われるという予言に怯え、生まれた子供たちを次々に呑み込んでしまう。
しかし、母親の機転によって命を救われたゼウスは成長し、奸計によってクロノスが呑み込んだ兄弟を皆、吐き出させることに成功、兄弟神と共にクロノスら勢力と戦い、十年間の戦闘の末、幽閉されていた怪物たちの力も借り、とうとうこれを打ち倒すことに成功する。

その後、ゼウスらはくじ引きを行い、兄弟神で世界を分けて統治することにした。
ゼウスは天界(と共に地上のすべて)、ポセイドンには海界、ハデスには冥界がそれぞれ、くじで配当された。
天と地を統治するゼウスはオリュンポスの山に座し、彼の傘下には神々によるパンテオンが構成された。
ゼウス。ヘーラー。アテナ。アルテミス。アフロディーテ。ヘスティアー。アポローン。ヘルメス。アレース。ヘパイストス。デーメーテル。ポセイドン。
オリュンポス12神である(ディオニソスを加える場合もある)。

見て頂いたらわかるように、この12神の中に、冥王星であるハデス=プルートーは含まれていない。
ゼウスの兄弟でありながら、彼は地の底に追いやられ、神々の列からのけ者にされてしまう。
冥界、地底の神となったハデスは、これ以降、地母神であるデーメーテルの娘のペルセポネーを略奪するなどし、地上に災厄をもたらす元凶となっていく。
ペルセポネーはハデスに略奪され、彼の妃となった結果、一年の3分の2を地上で、3分の1を地下で過ごさなければならなくなる。
地母神の娘であるペルセポネーもまた穀物神、地に根ざす女神といわれる。彼女の神格は、地上の穀物の生育に関連している。

そして今、冥王星と同じエッジワース・カイパーベルトの天体、1992QB1がこのペルセポネーの候補として注目されている。
またペルセポネーの本質が発動すれば、人類は3分の1になるとも言われている……。

ここまで述べると、もう大方は想像がつくと思う。
2006年の8月24日、国際天文学連合の総会によって、冥王星は惑星から矮惑星に降格されたが、それはそのまま冥界に落とされ、輝かしい神々の参列から外されたハデスの質そのものだということが。
そして仲間はずれになった後のプルートーこそが、本当に怖いのだということが。

惑星から降格され、冥王星は力を減少させたりはしない。
むしろ妬みと略奪の星としての性質を、今後、さらに強めていくはずだ。
そして、それが世界の大動乱や、最悪、地上のものを3分の1に削り落とす原因となるかも知れない。
また降格後、にわかに穀物が石油の代替燃料として注目され、小麦やトウモロコシなどが品不足になってきているのも注目される。

プルートーによるペルセポネーの略奪は、すでに始まっているのかも知れない。