新邪馬台国論 読了 |  ZEPHYR

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― the field for the study of astrology and original novels ―
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故・松本清張氏以来、推理作家の中にも邪馬台国論争に興味を抱き、それを題材にしたミステリーや、論考そのものを著しておられる方も多い。
邪馬台国論争といえば、とかく珍説奇説が横行している。四国、沖縄なんていうのはまだいいほうで、石川、青森、宮城、飛騨、フィリピン、はてはジャワ・スマトラ、エジプト説なんていうのもある。
こういった仮説でも、その本を読めばなるほどと、何となく納得させられてしまうところが面白い。
つまり、それくらい「魏志倭人伝」の記述がいい加減だという証明なのだが(いや、正確無比だと主張される方もいる)、出版社のほうでも売れる本を売りたがるので、ある意味、きまじめな研究ほど見向きもされない傾向がある。
聞いたこともないような場所が邪馬台国だったという説の方が意外性があり、面白みがあるからだ。

しかし、上記のような説の多くは、やはり考古学的にいって無理があるということは、理性的な人間ならばすぐに理解されるだろう。あくまでも現状の考古学成果から考えてだが。
将来、常識を覆すような発見があれば別だが、今のところ近畿説・九州説以上の候補地はないと考えられる。
さてそこで、大和岩雄(おおわいわお)氏の「新邪馬台国論」である。
2000年の段階ですでに刊行されているこの本、この度、ようやくきちんと完読できた。

邪馬台国論争においては、論者の多くは先に結論ありきであることが多いように思われる。つまり自分はヤマト説だから、そのために必要な論法を見つけ出していく。「魏志倭人伝」や考古学資料の有利な部分だけに着目する。
プロフェッショナルな方でさえ、このような傾向が目に付く。
しかし、大和氏は現在までに知られている考古学データと、「魏志倭人伝」の信用するに足る情報を突き合わせて、非常に丹念な論考を行っている。
結果、意外性のある結論も導き出している。
ただ、それは意外性を狙ってものでは決してない。
完全な論理的な帰結だ。
そして、その論理には隙がないように思える。

ミステリーのようである。
これまで読んだ、どんな邪馬台国論よりも、ありとあらゆる意味で納得をさせられた。
興味のある方は、ご一読を。
最強の邪馬台国論です。