今週の火曜日、大学での後期の講義を終えた。
一年分の講義のスケジュール、1サイクルをクリアしたわけだ。
これで自分にも講師が務まるらしいことが証明され、ちょっと気が楽になった。
それにしても、この一年は大変だった。とくに後期に入ると、アドリブ的にこなせた前期とは異なり、毎週毎週が勉強と考察を重ねる日々だった。
しかし、そのおかげで私は作家として、小説と推理小説の本質に関し、より深い洞察と認識を得ることができた。推理小説なるものを書くことへのいくばくかの躊躇と迷いを、もしかすると払拭することができたかもしれない(この種の悩みは、プロとして送り手になった人間でないとわからない悩みだとは思う)。
この洞察と認識は、たぶん作家としても自分にこれから生きてくると思う。
それに未来へつながる洞察も得た。
そして何を書くべきなのかということもわかった。
思えばこの一年は、ずいぶん回り道をさせられてZEPHYRとしての成果は具体的に出せなかったが、それでよかったのかもしれない。
なぜなら私はもう一年前の私とは違うからだ。
それははっきり自覚する。
一年前の私と二年前の私は、作家としてはそれほど違わなかっただろう。
しかし、今はたぶん違うと思う。
回り道をさせられたように見えて、実は無駄な出来事など一つもない。
すべては光の方へと導かれている。学ばせられている。
そう思えた。
だから最後の講義で、私は生徒たちに礼を言った。「君たちのおかげだ」と。
そしてその大学で、おそらく私にしか伝えられない内容の講義を行った。
彼らがどう思ったか?
受け止めてくれる生徒が1人でも2人でもいてくれたらそれでいい。
そして彼らの光となってくれればいい。