ビッグコミックスで連載されていた「龍 RON」がこのたび完結したのを、単行本を読んで知った。
なんと、第1巻は1991年8月1日刊行になっていて、最終の42巻は2006年9月1日であるから、15年もかかっている。
42巻というのもすごいが、話の中身はもっとすごい。
物語は昭和、戦前の学生時代から終戦、そしてエピローグの部分で現代に近いエピソードが添えられるが、主軸は戦争を挟んだ激動期に生きた青年、日本人として生まれ育ちながら、中国皇帝の秘宝を守る女系部族の母親の血を引く押小路龍の、波乱に富んだ人生を描いたものだ。
当初は武道を志し、やがてはその枠にも収まり切らず、企業経営に引っ張り込まれ、その時代の航空業界のプリンス的立場に登りつめながら、やがては失墜、同時に父を殺した暗殺集団の首謀者である双子の兄弟を追って中国へ。最下層の労働者から中華マフィア、チンパンに身を投じ、登りつめ、さらには匪賊・馬賊の頭目となりながら、人類滅亡につながる兵器(原爆)を産み落としかねない皇帝の秘宝を探し求め、権力国家から遠ざけ、守ろうとする龍。
経歴だけでも相当なものだが、この一見ハチャメチャに見る物語を、破綻なく構成する最大の力となっているのが、主人公の龍である。
彼のあけっぴろげでありながら真摯な生き様が、物語に常に揺るがない一本の筋を通している。
村上もとかさんは、ずっと昔から好きな漫画家だ。
ジャンプだったと思うが、連載していた「虎のレーサー」(単行本は「熱風の虎」)の頃からのファンで、とくに「赤いペガサス」は衝撃的だった。
その後の作品全てを呼んでいるわけではないが、「RON」はこれまでの氏の業績の集大成のような作品に仕上がっていると思う。
NHKの大河ドラマにでもしてもらいたい。
自分でもノベライズしたいと思うような物語だ(したら大変な作業になるだろうが)。
下手な小説よりも、はるかにスケールがでかく、読み応えのある漫画。
この物語を世に送り出してくれた村上さんに感謝と拍手を。