6月27日。
今日、大学での「顔 FACE」を使った講義を終えた。
横山秀夫さんのこの作品を使った講義は、一つの冒険だった。教材を使った講義は、場合によっては退屈になりやすい。それに沿って推理小説の技法や理念を教えていくと、推理小説そのものに関心の薄い大多数の生徒にとっては、とても眠い内容になってしまう危険があった。
その割には、最終的にはよく聞いてくれている生徒が多かった(と思う)。
この「FACE」の講義をきちんと聴いてくれる生徒がどれだけ獲得できる状態で、7月を迎えられるかが、自分自身にとって初めての大学講師としての仕事の一つの目安になるだろうとは思っていた。
この講義が聴いていられるということは、これまでの講義で教えてきたことが、ある程度浸透しているからと考えられるからだ。でないと、一本の推理小説の構造的解説、また創作上の主題、テクニックなども理解できないはずだからだ。
初回講義のときに行った調査で、150人ほどの受講生の大半は日常的に小説など読まないことが判明している。
これら完全に活字離れしている生徒たちに、小説の魅力、面白さがどこまで伝えられたかわからないが、小説の講義を通じて彼らの心のどこかに、自分の人生のどこかの局面で関連した要因を見つける手がかりを残せたら、私個人としてはまずは満足である。
物語作りも、結局は他の多くの仕事や人生の創造と同じものなのだから。
さて今日の講義には、ZEPHYR会員となっている薫葉君と、いつも支援をくださる礼子さんが顔を覗かせてくれた。
とくに遠路、新幹線でわざわざ来てくださった礼子さん、ありがとうございます。
期待にかなうような講義ができているかどうかわかりませんが、やはり礼子さんのような方がいてくださることは作家冥利に尽きます。
講義も前期は残り四回。いよいよ生徒たちには正念場(次回は大阪で使ったミステリーによるクイズ)となる。