大人の発達障害者のための、「叱られ方のルール」について述べたいと思います。
発達障害者の方には、上司の叱責の時間を「長い」、「時間の無駄」と感じている方もいます。
「嵐の時間をどう受け流そうか」と考えています。
自分の中では、
「早く終わってほしいなどとは思っていない」
と思っていても、叱られているときの態度によっては受け手に
「早く終わってほしいと思っているのか」
と受け取られてしまうこともあります。
それでは、大人の発達障害におけるやってしまいがちなパターンを見ていきましょう。
■あやまり倒し
ASDの方は、条件と対応をセットで学びます。
叱られる場面においても、
「叱られる→謝る」
ということをセットで覚えているので、ASDの方は、条件反射的に謝罪の言葉を繰り返してしまいます。
その他の理由として、
● 叱られるとちょっとしたパニックになる
● ASDの方はとっさに言葉を考えるのが苦手なため、同じ謝罪の言葉を繰り返してしまう
ということも挙げられます。
上司が黙るまでひたすら謝り続けるという人もいるようです。
【改善策】
相手の話を最後まで聞いてから謝罪の言葉を入れる
何回も畳みかけるように謝罪の言葉を言わない
■指いじり
ADHDの方は、叱られている最中に集中力を切らしやすく、貧乏ゆすりや手遊びをすることでストレスを逃がす傾向があります。
これは、自分の集中力を切らさないために自然と出てしまう行為です。
発達障害者に限らず、叱られている時というのは、誰でもストレスなので、発散したいと考えます。そのときにADHDの方は発散行為として無意識に出やすくなります。
しかし、叱る側は、「自分の話を聞いていない」と受け取ります。
【改善策】
どうしても我慢ができなければ後ろに手を組み、相手の見えないところで行う。
■自分の腕時計を見るなどよそ見をしてしまう
「自分のやるべきこともたまっているのに、、叱られている時間がもったいない」
と思っていると、無意識に腕時計を見たり、壁時計を見たりしてしまいがちですが、そうすると、上司は「オレの話を聞いていない」と思い、よけい話が長引いてしまいます。
【改善策】
時間をとられていると思うと、無意識に腕時計に目が行ってしまうかもしれませんが、なんとかそういうことをこらえて、上司の話を傾聴しようとすることが大事です。
■上司の話の流れを断ち切る
ADHDの方は集中力を切らしやすく、上司が話している最中でも他のことに気が行きがちです。
すると、上司の服についた糸くずなどが気になってしまい、上司が話している最中にもかかわらず「糸くずがついていましたよ」と言ってしまいがちです。(本人は親切のつもりで言っている)
相手の話の途中で、相手の話の流れを断ち切るのはとても失礼なことなので気を付けねばなりません。
■ ダンマリを決め込む
ASDの方には、上司の叱責を「嵐」ととらえる方も多く、自分の殻にこもって嵐が過ぎ去るのを待っているという方もいます。
今までの経験から「自分がなにか説明しても、どうせ、「言い訳するな」と怒られる、だから黙っていよう」と考えている場合もあります。
上司から「なんでこんなことをしたんだ」と叱られたときに、素直に理由を話しただけなのに、(この時に謝罪の言葉がない場合が多い)「言い訳だ」ととられたり、口調が他人事なために「お前のことで叱っているのに、なんでお前の言い方は他人事なんだ」と余計火に油を注ぐことになるという経験から「だんまりを決めたほうがましだ」と思ってしまうのです。
その他の言動としては、
● むっとした表情で話を聞く
● 上司と目を合わせずに受け流そうとする
● 「あ、はい、それより・・」と無理やり別の話に切り替えようとする
というケースもあるようです。
叱る上司のほうにも問題がある場合もあり、
●具体的な数量を示さない
●具体的な行動や手順を示さない
●察してくれというような言い方をする
などASDの方が理解できない叱り方をしている場合もあります。
■ あくびをする、足を組む、腕組み、頬づえ
説明をするまでもなく論外です。
発達障害の方がまず気をつけねばならないことは、やはり
「傾聴」
であり、「人の話は最後の「。」まで聞く」のが大事になってきます。
相手が一通りしゃべってしまったあとに「申し訳ありませんでした」の一言を言うのが大事です。
このときに、体育会系のような元気のよい謝罪は、好まれません。
大声は出さずに、丁寧に、落ち着いて、深みのある謝罪をすることが大事です。
指示受けの記事でも述べた「相槌」は、「あなたの話をちゃんと聞いています」という意味で、とても大事で、叱られている時も適度に打つことが必要です。
目線は、相手の目に合わせますが、「自分は悪くない」というような目をしていると逆効果になってしまいます。
■相手に誤解がある場合
相手に誤解がある場合でも、「相手が話し終わってから」が基本です。
話し終わったところで、まず謝罪の言葉
「申し訳ありません」
を言い、それから
「ただ、○○の件につきましては少し誤解があるので説明させてください」
と言えば、上司も素直に聞き入れてくれます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【大人の発達障害のための指示受けのルール】
発達障害の方は、指示受けが苦手だと言われます。
上司の意図を汲み取り、その場その場の応対力が求められ、指示されたことに対しては明確なイメージを持つ必要があるわけですから、苦手なのは必然的だと言えます。
相槌や返事などのコミュニケーションの作法。
発達障害者の方には、
相手の話さえきちんと聞いていれば、こちらがどんな行動をしていようが同じじゃないか、いちいち返事をしたり、相槌を打ったりするのにどういう意味があるの?
と考える人もいるかもしれません。
難しい問題ではありますが、今回の記事では、指示受けをパターン化で覚えてしまいましょうという企画です。
それでは、指示受けの仕方について述べたいと思います。
1 指示受けのためのメモ帳は事前に準備
まず、ビジネスマンの心構えとして、指示受けを受けるためのメモ帳は必ず持っておくことです。メモ帳を持つことは「その仕事へのやる気の表れ」でもあります。
2 名前を呼ばれたら、「はい」と返事をして、相手の顔を見ながら立ち上がる
【NG行動】
●パソコン作業をしながら「はい」と返事をし、上司の顔を見ない。
●返事をしただけで、上司のもとへ向かわない。(呼ばれたらすぐに上司の元へ行く)
3 上司のもとへ向かう
【NG行動】
●走って向かう(早歩き程度が望ましい)
●メモ帳、ペンを持っていかない。(「やる気がない」という評価を下される)
4 上司のもとへついたら
少し間があるようなら「ご用でしょうか?」と聞き、上司がすぐ話し始めたらメモ帳を開いてメモをとる
【NG行動】
●「私はメモ帳がなくても聞き取れる」と思い、メモ帳を開かない(「普段、メモ帳にメモをとらないから君はミスばかりするんだ」と上司に思われてしまう)
●「なんですか?」と言う。(「なんですか?」はぶっきらぼうな言い方)
5 上司が話をしている最中の言動
まず、相手の用件をすべて聞きます。
この段階では、質問したいこと、自分の言いたい事(主張)は、言いたくても言ってはいけません。
「人の話は最後の「。」まで聞く」が基本です。
目線は、相手の目か口元に置きます。
【NG行動】
● あいづちを打たない
あいづちは、軽くうなづく、もしくは「はい」と言います。
発達障害の方には、あいづちを打たず、じっと聞いている方も多いと言われますが、 あいづちを打たないとしゃべっている側は「ちゃんと私の話を聞いているのだろうか?」と不安になります。
● 相手の机をメモをとるときの台代わりにする
相手の机は「相手の領域」。相手の机を、台代わりにするのは失礼な行為にあたるので気をつける。
【ポイント】
メモをとりながら相手の話を聞くことができない(マルチタスクが苦手)という人は、日時や数量など、数字の部分だけ書いておくのもよい。
相手の話を全部カタカナで書くというのも一つの手。カタカナは画数が少ないので、人の会話のスピードについていきやすい。
6 相手が話し終えたタイミングで「わかりました」と言う
7 相手の指示内容を復唱する
「係長の指示内容は、1点目は○○、2点目は○○、3点目は○○ということでよろしいでしょうか?」
8 上司への質問、疑問点を確認する
「係長の指示に対して2点わからないことがあるので質問してもよろしいでしょうか?」
※今、質問は思いつかないけれども、今一つ自身がない場合には、「やってみてわからないことがあったら、また伺ってもよろしいでしょうか?」と言うとよい。
※締め切りが示されていない場合は、締め切りを確認する。
9 黙って立ち去らない
相手からの追加の指示がないようなら、「それでは失礼します」と言います。
【NG行動】
● なにも言わずに立ち去る
発達障害者の方には「自分の頭の中で理解した」と思うと、「わかりました」と言わない方もいますし、上司から離れる際に、「失礼します」の言葉なしで立ち去るという人もいるかと思いますが、それはとても失礼な行為になります。理解したのかしていないのかは、言葉に出してはじめて相手に伝わります。必ず「わかりました」の一言は必要です。
帰るときも帰る意思はしっかり相手に伝えねばなりません。
10 聞きながらメモを取れないタイプの人は、自分の机に戻ってから指示内容をメモ帳に整理する
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
相槌の重要性
発達障害の方の中には人の話に対して無反応な方も多いと言います。
相槌がないと、定型発達の方は「本当に私の話を聞いているのか?」と不安になってきます。
そういう不安感を抱かせないためにも相槌は大事です。
といっても相槌が苦手なことも多いと思います。
相槌のタイミングがずれているとか・・
話の節目で相槌を打つ行動は、「ここまでわかりました」と相手に伝える意味があります。
相槌を打つタイミング
(1) 相手が言葉をいったん区切って、視線を合わせてきたとき
(2) 相手が問いかけてきたとき
練習方法
テレビのキャスターに合わせて相槌を打ってみる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
NG語集
● 「一応」
例
上司 「この前やるようにと言った仕事はやってくれたかね?」
部下 「一応、やりました」
一応という言葉には「てきとうに」、「真剣にやっていない」という意味も含まれるので、できればビジネスでは使わないほうがいいでしょう。
●「はいはい」
例
上司 「○日まで仕事やってくれるかね?」
部下 「はいはい」
「はいはい」という言葉には「本当は上司の言葉には納得していないけれど、この場を収めるためには「はい」というしかない」という意味も込められます。なので、返事は「はい」と1つだけ言うように心がけるといいでしょう。
「まぁ、わかりました」という言い方も、「本当は異論もあるけど、面倒なことになりそうだからあえて言わないでおいてやる」という意味合いがあり、失礼な言葉になります。
修正案: 「わかりました。やってみて、不明な点があればまた質問に伺います」
●「で?」「だから?」「それが?」「なにがですか?」
発達障害者側からすれば、相手の話が途中で止まってしまった時になにが言いたいのかわからないので使ってしまうと場合もあるとは思うのですが、このような言葉は喧嘩ごしになっているような言い方なので使わないほうがよいです。
上司の意図
「ここまではいい?」という意味で、相槌や返事を待っている状態。
修正案
相槌がされていないのが原因。
上司に話の理解度を伝えることが大事。
●「これでもういいですか?」
この言葉は「言われたことはもうやったから、あとはもう手を離したい。ミスの確認はそっちでやってほしい。そのあとで仮にミスが見つかっても、もう自分の責任ではない」と言っているように受け取られます。
修正案としては「終わりました。ご確認をお願いします」と言うか、「ご依頼は以上でよろしいでしょうか?」と言うといいでしょう。
●「別にいいです」
この言葉は、「本当は気が進まないけれどやります」と言っているように受け取られます。
●「はあ」
この言葉には「「はい」にいたるまで理解していない」という意味がありますが、言われたほうからしてみると、「俺の意見に反論している」、「あなたの言っている意味はよくわからないのですが、まあ続けてください」と言っているように受け取られる場合があります。
「はあ」ではなく、やはり「はい」というようにしたほうがいいです。
●「ていうか」、「それより」
この言葉を使う側は、「今上司が話している話よりも大事で優先すべきことがある」という思いがあるのかもしれませんが、その言葉を受ける上司側は、
「オレの話をそらそうとしている」と受け取る可能性があります。
修正案としては、相手の話を最後まで聞いてから「承知いたしました」と言い、続けて「それと、別件なのですが、今お話しさせていただしてよろしいでしょうか?」と言えば角が立たずにすみます。
●「なんのためにやるんですか?」
この言葉を言う側は、「指示の目的がわからず、どう受け取ればいいのかわからない」という意味で使っているのかもしれませんが、上司側からすると、「そんな仕事(指示)に意味はない」、「お前の意見には意味がない」と言っているように聞こえてしまいます。
修正案としては、「承知いたしました」と承諾の意志を伝えてから「質問よろしいでしょうか?」と聞き、「このご指示の目的を確認させてください」と言えば上司も気持ちよく答えてくれます。
●(相手をほめるときに)「わりといいですね」
ちょっと見下した言い方に聞こえる場合があります。
「自分のほうがもっとよくできるけど」と言っているようにも聞こえます。
修正案
「わりと」はつけない。
「良いですね」