秋の盛りで、美しく設えられた六条屋敷にも台風はやって来ます。夕霧くんは光くんに報告があったので、春の御殿にやって来ました。

風が強くなって来て、メイド達もバタバタと準備しています。風で倒れないように普段は立ててある衝立や屏風も片付けてありますので、部屋の中まで良く見えます。夕霧くんも声をかけづらい雰囲気もあって、黙って様子をみていると、庭の草木が倒れているのを、一人落ち着いた様子で眺めている女性を夕霧くんは見てしまいました。

「何あの女性(ひと)、めっちゃキレイやん...。間違いない、あのひとが紫さんだ!」
「どおりで、父さんは誰にも会わせないはずだ」夕霧くん、一人ドキドキしながら、覗いていましたが、光くんが明子ちゃんの部屋から戻って来ました。

「雨戸を閉めなさい。外から丸見えになってるぞ」光くん、外から丸見えになっている紫ちゃんの部屋を見て焦って指示します。
夕霧くんはさも今来たかのように、咳払いをしてメイドの注意を引きます。

「お父様、先ほどまで三条のおばあ様の所にいたんですが、こちらの様子を見に、一度戻りました。また、おばあ様の所に戻ろうと思います」
「うん、それがいいな。『台風で不安でしょう。夕霧を行かせたので安心して下さい』と伝えておいてね」

夕霧くんが三条屋敷に戻ると三条夫人は喜んでくれました。その夜、風の音を聞きながら、夕霧くんはちっとも寝られません。「紫さん、キレイな人だったなぁ...。あんなキレイな人を奥さんにしているのに、お父様は里美お母様を見捨てないなんて。比べ物にならないのに。紫さんみたいな人が奥さんならいいのに...」

夕霧くん、女性は見た目だけではないのですよ。
さて、夜が明けて、今度は六条屋敷にとって返して、里美ちゃんのお見舞いです。
「お母様、大丈夫?」等と言いながらも、頭は紫ちゃんのことで一杯です。お見舞いもそこそこに、紫ちゃんの部屋の方に行きます。光くんがいるのは分かっているので、今回は近くまで行って、それとなく知らせます。

「ああ、夕霧か?早いな」光くん、紫ちゃんと一緒に寝ていたベッドからごそごそと這い出し、ちゃちゃっと服を身に付けます。
「ふふっ、朝早くにベッドを出て身支度するなんて、恋人の朝帰りみたいだね。紫ちゃんはそんな気分を味わったことないでしょ?」「まあ、光っちたら」等とイチャイチャしています。

夕霧くん、部屋から漏れてくる声を聞きながら、(何言ってんだか、エロ親父が...。羨ましい)と考えていると、ガラッと戸を開けて光くんが出て来ました。
「どうだった?三条のおばあ様は?」
夕霧くんは三条夫人の様子を報告しますが、中の様子が気になるようで、チラチラ中を気にしています。

夕霧くんが立ち去った後、光くんが紫ちゃんに、「ねぇ、昨日、紫ちゃん、夕霧にみられなかった?」
「まさか。大丈夫だったよ」
「いや、何か怪しい」光くんは、自分の若い頃を考えると心配になります。

光くん、夕霧くんの心配はさておき、玉子ちゃんの様子を見に来ました。例によってちょっかいをかける光くんに「昨日の嵐に連れ去ってもらえば良かった」と言うと、
「嵐なんて軽々しい若造のモノになるの?光GENJIの方がいいよ」と親父ギャグが帰って来ました。

台風でバタバタしている折、玉子ちゃんを見ることが出来ないかとやって来た夕霧くん、ちょうど、光くんが玉子ちゃんを抱き寄せる所を見てしまいました。
(まさか、実の親子で!小さい頃離れて暮らしているとそういう気持ちになるものなのか?!)
(それにしても、紫さんほどではないが、玉子姉さんもキレイやな~。親父があんなことしてるなら、僕もワンチャンあるかも)と不埒なことを考える夕霧くんなのでした。

悶々として、妹の明子ちゃんの所にやって来ました。(あ、雁乃に見舞いのメールしてないや)
メイドに紙を借りて、ささっと書くと、そこらに生えていた適当な草に結び付けます。「そんな、せめて綺麗な花の枝にでも...」とメイドが言うと、「そんなもんかな?ま、いいよ」とそのまま送信してしまいます。

その後、明子ちゃんの遊び相手をしながら、(うん、明子も可愛いなあ~。この分だと、明美さんも美人だろうなあ)とすっかり台風に心を乱された夕霧くんなのでした。

【教訓】夕霧くんはまだ若いので、顔を見た相手ばかり好きになります。幼なじみの雁乃、ダンサーの藤乃、そして今回です。当時は顔は分からないまま、人の噂やカーテン越しの声や雰囲気を頼りにメールで気持ちを重ねて、遂に御対面!でした。
何か、出会い系に似てますね。でも、人は見た目じゃないですよ。
弘美ちゃんの所で仕えるようになった近江ちゃんの噂は、六条屋敷にも聞こえて来ています。

今日も今日とて、琴を教える名目で玉子ちゃんの所に来ている光くんは、「内大臣も酷いよね~。今までひっそり暮らしてた娘を引き取っておいて、思っていたのと違うからって、人目につく姉妃の所に行儀見習いに出して、笑い者にしてるんだから」と噂に乗っかって、ヤンキー兄やんを貶します。

玉子ちゃんも、(自分も京都を遠く離れた博多で、何も知らずに育ったんだもの。内大臣のお父様に引き取られていたら、同じ目にあっていたかしら...。光お父様の所に引き取られて良かったのかも)と考えていました。

確かに光くんは、際どい愛の囁きや、過度のスキンシップを求めて来ますが、プラトニック?ラブで、最後の一線は超えない様にしているので、玉子ちゃんも心を許すようになっていました。

和琴のレッスンが終わった後、光くんと玉子ちゃんは秋の長い宵の口に寝転んでイチャイチャしていました。
(光源氏ともあろう者が、こんなにグズグズしているとはね...)と自分を笑いながら、(そろそろ帰らないと紫ちゃんが怒るな)と帰ろうとした際に、庭の篝火が暗くなっているのが気になりました。

「誰か、玉子ちゃんが怖がるといけないから、篝火が消えない様に気を付けてやって」と、玉子ちゃんの頭をポンポン、ナデナデしています。ちなみに玉子ちゃんは22歳、そんな歳ではありません。

「♪(篝火のように)激しく燃える恋の焔は誰にも消せないの 切ない片思い~」と光くんが唄うと、

「そんな恋の焔は煙と一緒に空の彼方に飛ばして下さいな」と玉子ちゃんもかわし方が上手くなってきました。

そこに、夕霧くんのいる辺りから、見事な笛の音が聞こえてきました。また、ヤンキーズJr.が来ているようです。「ああ、見事な笛だ。あれは柏木だろう」と、光くんは彼らを呼び寄せます。

やって来た息子達と、セッションを始めます。光くんは今まで玉子ちゃんに教えていた和琴、夕霧くんが笛を吹きます。柏木くんが遠慮して中々加わろうとしないので、光くんが「はい、どうぞ」と和琴を渡します。

ヤンキー兄やんの息子だけあって、琴も見事なものです。実の姉とは知らない柏木くん、玉子ちゃんに届けと、心を込めて演奏するのでした。響け!ヤマトゴト!

【教訓】急いてはことを仕損じる。若者同士なら勢いでやっちゃっても良いですが、年齢差がある場合、焦ってはいけません。しかし、関心のない態度をとっては気持ちが伝わりません。
情熱的な言葉とスキンシップをとりながら、決して無理強いはしないことで、下心で一杯の光くんは玉子ちゃんの信頼を得てしまいました。危ない危ない。
ヤンキー兄やんは、ウワサの近江(ちかえ)ちゃんのことで、頭を痛めていました。引き取ったものの、未だに忘れられない心ならずも引き裂かれた悲恋の相手の娘(玉子ちゃんのこと)ではありませんでした。

世間では「娘を引き取ったけど、姫としての扱いもせず、雑に扱っている」とウワサされているのも腹が立ちます。ま、ウワサの元は身内なのですが...。

くさくさした気分のまま、これまた扱いに困っている雁乃ちゃんの部屋を訪ねると、真夏と言うこともあって、薄着にシフォンのローブをまとって、昼寝をしています。透けた素肌がセクシーです。
スヤスヤ寝ているので、扇をパチンと鳴らすと、起きた雁乃ちゃんと目が合いました。雁乃ちゃんが「いやん」と顔を赤らめる様子は(か、かわええ)と百戦錬磨のヤンキー兄やんも思わず、ゴクリと唾をのむ程でした。

「こら、メイドがそばにいないのに、油断してお昼寝しちゃダメだぞ。雁乃は可愛いんだから。とは言え、全く隙がないのも可愛げがないが...」
「雁乃を帝の妃にとも思ったけど、ダメだったね。でも、パパに考えがあるから、変な男に捕まっちゃいかんぞ」と、イマイチ何を言いたいのか分からないお説教をされた雁乃ちゃんでした。

「昔はたまにパパに会えると単純に嬉しかったけど、夕霧のことが好きだって気付いてからは、パパの顔を真っ直ぐ見れなくなっちゃった...」雁乃ちゃんは今も夕霧くんを忘れられずにいました。

さて、続けて近江ちゃんの部屋を覗いてみると、「小賽!小賽!(サイコロの小さい目のおまじない)」とカラカラとサイコロを振る音がします。馴染みのメイドとボードゲームをやっていました。

兄やんは「近江ちゃん、どないや?ここの暮らしは窮屈で大変やろ?」と声をかけます。
「そんなことないで。やっと父ちゃんに会えたんやもん。中々会えへんけど、毎日会えるなら、トイレ掃除でもやるで」と近江ちゃんは早口でまくし立てます。
「トイレ掃除はしなくていいが...、その早口は何とかならんの?」早口でベラベラ喋るのは、貴族に似つかわしくありません。
「これ生まれつきやねん。生まれる時の祈祷の坊主の早口が感染ったんやと母ちゃんも言うてました。でも、気ぃつけるわ」としおらしい一面も見せます。

「そうや、姉ちゃんの弘美が帰省しているから、そこで行儀見習いでもしたらどうや?」と兄やんが思い付きを口にすると、
「キャー、嬉しい!ええの?お妃様の所に遊びに行っても!水汲みでも何でもするわ」と興奮してまた、早口になってます。
「まあ、ええわ。しっかり教えてもろてきなはれ」とヤンキー兄やんは帰って行きました。

「はー、カッコええわぁ。あれが私の父ちゃんやねんで」と呟くと、
メイドが「でも、立派過ぎて疲れへん?ここまで身分が高くなくても、もうちょっと大事にしてくれる家の方がよかったんちゃう?」と言うと、
「何いうてけつかんねん。本来、あんたとは身分が違うねんで。これだから下々の者は」と知った風な口をききます。「ヘイヘイ」と適当に応じるメイドでした。

姉とは言え、帝の妃である弘美ちゃんの所に伺うには、家の中と言っても、事前にお手紙を書くと言う程度の知識は近江ちゃんにもありますので、頑張って書きました。

「すぐそばに住ませてもらってごぜえますが、今までごあいさつもしておられませんご無礼をお許し頂きたく。嫌われているかもと思うとヒビっちゃってますが、何卒、何卒よろしくお願いします」と言った具合です。

手紙を読んだ弘美ちゃんは、「これが今時の手紙なのかしら?流行りについていけないので、貴女が返事を書いてくれるかしら?」とメイドには丸投げです。

メイドも笑いながらも、「茨城にあると言う静岡の海の須磨の浦にお出で下さい。箱崎の松が待ってます」と返事を書き上げました。

弘美ちゃんは「困ったわ。私が書いたと思われたらどうしましょう?」と、丸投げしておいて、部下の仕事に文句をつけるよくある上司っぷりを発揮します。
「まさか?見る火とが見れば、わかりますよ」

「キャー、弘美様からお返事がきたわ!流石!素敵なお手紙!待ってるって」
...分かってませんでした。

【教訓】チラリズムは恋のスパイス。雁乃ちゃんのシフォンの生地から透ける素肌。夕霧くんが見たら興奮間違いなしです。
しゃがんだ女性の太ももの間の絶対領域、かがんだ胸元から覗くブラジャー、座った後ろ姿のジーンズから見えるショーツ。ドキドキします。
ただ、胸元からレーズンが見えたり、ジーンズからエクボがこんにちは!はチラリズムとは言えません。まあ、好きですけど。
暑い夏の夕方、今日も夕霧くんがヤンキーズJr.を六条屋敷に連れて来ています。光くんも出てきて若者達と酒盛りしながら、世間話です。

「最近、内大臣(ヤンキー兄やんのこと)は娘を探し出して大事に育ててるらしいじゃない?我が家は子供が少ないからうらやましいねぇ」と光くんがヤンキーズJr.に尋ねます。
「ええ、親父の夢占いで、娘がいるって出たんで、ほうぼう探したら名乗り出てきたんすけどね...。」ヤンキーズJr.は言い淀みます。

「ま、内大臣も若い頃はヤンチャして、いかがわしい所にも行ってたからね」
「そうだ、夕霧、もう雁乃ちゃんのことは諦めて、その娘にしたら?」とついでに息子をからかいます。

「さ、オジサンは退散するかな?」とついでを装って、同じ夏の町にいる玉子ちゃんの所に行きます。
「ほら、見てごらん。玉子ちゃんの兄弟達だよ。彼らは玉子ちゃんの所に来たくて堪らないだよ。ウケるー」とニヤニヤしています。

「夕霧は彼らの中でも一際イイ男なのに...。それにしても、ヤンキー兄やんは夕霧のことを嫌うのかなぁ。藤原一族に天皇家の血が混ざるのを良しとしないのか。幼い恋を引き裂くとは無粋な」とブツブツ言ってます。
聞きながら、玉子ちゃんは(光さんとお父さんは仲が悪いんだ...。それじゃ、いつ私のことを話してくれるのか)

そんな玉子ちゃんの心を知ってか知らずか、光くんは、傍らの和琴をサラッと鳴らすと、その音色に反応した玉子ちゃんに、琴のセッションにこと寄せて、また、ちょっかいを出します。

「今、和琴が上手いのは貴女のお父さんだね」光くんが言うと、「お義父様がこんなに素晴らしい演奏をするのに、それ以上なのですか?いつか聞くことが出来るでしょうか...」

「名人がマジで演るのは、中々聞く機会はないけど、玉子ちゃんは別。きっといつか聞くことが出来るよ」光くん、相変わらず女心をくすぐります。

さて、光くんはアレコレちょっかいを出し、際どい会話は仕掛けて来るものの、最後の一線は守っているので、玉子ちゃんもだんだん、心を開く様になっていました。

ところが、光くんとしては(いっそ、玉子ちゃんもやっちゃうか?イヤイヤ、そうなるとヤンキー兄やんを「お義父さん」と呼ぶことになる。それはゴメンだなー)
(やっぱり、誰かと結婚させるか?しかし、それで俺は我慢てきるのか?結婚させた後もこの屋敷において、婿に通わせれば、いつでもちょっかい出せるか...?人妻になった玉子ちゃんとあんなこたとや、こんなこと。それもええなぁ)
と、不埒な妄想が止まらない光くんなのでした。

【教訓】光くん、息子に厳しい教育方針で臨んでいますが、やはり可愛いようで、親バカ全開です。ただ、ヤンキーズJr.と比べてしまうのは、ヤンキー兄やんへの複雑な感情から来るものです。夕霧くんと雁乃ちゃんの仲を引き裂いたことをヤンキー兄やんのせいにしていますが、光くんも意固地になっています。
親の意地が子の恋路の障害になるのは、如何なものかと思います。人間、素直が一番です。
危うく玉子ちゃんと一線を越えて、一戦交えそうになった光くんですが、仕事の面では太政大臣に昇格しました。名実共に最高位です。

とは言え、目下の関心事は玉子ちゃんです。また、ノコノコと部屋にやって来ては、蛍くんの手紙の返事を書きなさいと指示しています。ところが玉子ちゃんが書かないので、時々代筆させているメイドの一人に蛍くんへのメールを書かせます。

蛍くん、代筆ながら、珍しく色よい返事がもらえたので、早速、六条屋敷にやって来ました。玉子ちゃんは横になっていましたが、こっそり部屋を覗いている光くんから「塩対応はダメ」と釘を刺されたので、カーテンの向こう側に移動して、蛍くんの愛の囁きを聞いています。

そこにそっとやって来た光くんが、カーテンの垂れ幕を捲って、部屋の中に予め用意していた蛍を放ちます。レース越しに蛍の仄かな明かりが、玉子ちゃんの姿を浮かび上がらせます。

蛍くんは突然のことに驚きながらも、初めて目にした玉子ちゃんの姿に心を動かされ、「鳴き声のない蛍の光の様に、黙って燃え盛る貴女への想いは消せませんよ。分かってくれましたか?」と玉子ちゃんに言い寄ります。

玉子ちゃんは、「声に出さずに身を焦がしている蛍の方が、言い寄る貴方より想いが強そうですわ」と言い残して、部屋の奥に引っ込んでしまいました。
蛍くんは当てが外れて、夜が明ける前にスゴスゴと帰って行きました。

5月になり、里美ちゃんの住む夏の庭が盛りを迎えつつある日、夕霧くんが「僕んちで競馬でもやろうよ」と友達を連れて来ることになりました。夏の庭は広い馬場がご自慢です。里美ちゃんも親代わりとして、見物していました。

光くんも覗きに来て、宴会となりました。気前よくご褒美をあげて、息子の支持固めも忘れません。夜更けに宴会は終わり、光くんは久々に里美ちゃんの所に泊まりました。

御所に住んでいた頃の思い出話をして、長い付き合いの夫婦ですが、里美ちゃんはベッドは別々にしました。「こっちにおいでよ」と光くんは誘いますが、里美ちゃんは遠慮しました。

六条屋敷では少女漫画やラノベが大流行です。明美ちゃんは紫ちゃんの元で暮らす明子ちゃんに時々プレゼントしています。
光くんは小説より奇なりの人生を送っていますので、さして興味はないのですが、玉子ちゃんが読んでいるのを見て、「漫画の中の恋よりも、俺と新しい物語を作ろうぜ」等と横に座って玉子ちゃんの頭をナデナデします。
「本にも親の言うことは聞きなさいって書いてるでしょ?」

「どの本にもこんな親心は書いてありませんわ」と玉子ちゃんは困り果てています。それでも、無理強いはしない光くんでした。


そんな玉子ちゃんの嘆きが届いたのか、ある晩、ヤンキー兄やんは夢を見ました。占い師に確認すると「生き別れたお子様が、他人の世話になっているようです」とのこと。
そこで、ヤンキーズJr.を召集すると、「パパは昔ブイブイ言わせとったんや。何処かにいるお前達の姉妹を探してこい」と命じました。
Jr.達は「うぜぇ」と思いながらも、捜索に散るのでした。

【教訓】おっとりしているように見えてしたたかな里美ちゃんは、わざわざ裸になって20後半の紫ちゃんや明美ちゃんと比べられる様な愚は犯しません。女同士で争わず、肌を合わせず、賢母に徹することで「光くんの妻」の立場を確立しています。
少し緩んだボディ、十分な経験を持っているのに見せる羞じらいや、或いは歳を経て却って奔放に快楽を追求する所に男はそそられるんですけどね。
可愛い玉子ちゃんの恋模様を覗き見て、光くんも若干ハイになってます。言わなきゃいいのに、紫ちゃんを相手に、玉子ちゃんの話を始めます。
「いやー、可愛いなぁ玉子ちゃんは。夕子ちゃんと違って陰がないって言うか。頭もいいし」

むむ、これはマズい...と紫ちゃん、ピンと来ちゃった。
「頭がいいのに、こんなアブない人に気づかないなんて、お気の毒様」と嫌みをチクリ。
「何がアブないもんか...」と反論すると。

「私もアブないロリコンと知らずに、一緒に寝ていたら、怖い目にあったもん」
「む、あれはー、愛だろ、愛」と話がマズい方向に向かい始めたので、慌てて誤魔化します。

さて、今日も今日とて、玉子ちゃんを訪ねる光くんです。玉子ちゃんはお習字の練習をしていましたが、突然の光くんに驚いて、顔を上げました。光くんが近くの籠に盛ってあったレモンをふと、取って匂いをかぐ様子は、ザ・テレビジョンの表紙の様です。
光くんはレモンを置くと、可愛いアゴをくいっと上げて、「あぁ、やっぱり夕子ちゃんに良く似ている」と顔をのぞき込みます。
「ずっと昔に愛し合った可愛い人、懐かしい。ずっと寂しかったけど、玉子ちゃんに会って、また恋してる」とスッと手を握ります。

「やめて下さい。そんなに母に似ているなら、短命の所も似てしまうかも...」と涙がつぅーと頬を伝います。周囲の様子も気になります。

光くんは、ふっと笑うと、「メイド達からは見えないよ。そんなにキョドってると、見つかっちゃうよ。これは親心ですよ」勿論、そんな親心はありません。

メイド達も仲良し親娘の語らいに遠慮して、下がった様です。玉子ちゃんピン~チ!恥ずかしさと怯えで、伏せてしまいました。光くん、上着を脱ぐと、畳の上に広げ、ごろんと添い寝を始めてしまいます。

「メイド達に見つかったら、どうしよう。実の親なら、捨てられることはあってもこんな目にはあわないわ...」とうとう、玉子ちゃんは泣き出してしまいました。
「ゴメンゴメン。そんなに嫌がらないで。つい、昔を思い出しちゃってね」さすがにやり過ぎたかと、今日のところは引き下がることにしました。

翌朝、光くんは玉子ちゃんにメールしました。「エッチしたわけでもないのに、何落ち込んでんの?お子ちゃまだね」
腹立たしいメールですが、父親からのメールに返事をしないとメイド達も不審に思います。
「既読。調子が悪くて、返事が出来ません」

光くん、返信を見て「素直な娘」とニヤニヤしています。

【教訓】親子丼は男の夢かも知れません。美貌の母親と、可憐な美少女をどちらも我が物にする。六条姉さんの娘、秋好ちゃんの時は母親が強烈に怖い人だったので、見送りました。夕子ちゃんは怖くもありませんし、玉子ちゃんはまんまと自分の元に来ましたので、チャンス到来です。
親子丼で3Pは最強ですが、倫理的に問題ありますので、止めておきましょうね。
六条屋敷に春が来ました。六条屋敷は大きく4つのエリアに別れており、各々、春夏秋冬になぞらえて、ガーデニングしてあります。

春のエリアは紫ちゃんのエリアで、花々は咲き乱れ、蝶が舞い、鳥が歌って極楽の様です。各々のエリアは池でつながっています。要するにディ○ニーランドに住んでいる様なもんです。

光くんはドラゴンの飾り付けをしたフロートにミュージシャンとダンサーを乗せて、各エリアを周回させます。エリアのお屋敷の正面に着くと、ダンサーが上陸して躍りを披露します。ま、ディ○ニーシーのメディテレーニアン・ハーバーのファンタズミック!の様なもんです。光くんはそれを個人とハーレムの奥様方、招待客、従業員で楽しむ為に自腹で催しています。当然、招待客は飲み食い含めて無料です。
その資金は地方の荘園からがっぽり絞ってます。恐ろしい話です。

さて、里帰りしている秋好ちゃんが見物していると、紫ちゃんから「秋を待っている虫さん(秋を松虫)には春の様子はつまらないですよね?」と皮肉たっぷりのメールが届きました。

秋好ちゃんは「あの時(六条屋敷に入居した時)の仕返しかー。かなわないわね」と笑います。仲良しだからこその際どいやり取りです。

六条屋敷の招待客のお目当ては、玉子ちゃんです。光くんの弟の蛍くん、見た目が似ているので黒ひげ危機一髪と言うあだ名の右大将の中年コンビ、腹違いの妹とは知らないヤンキー兄やんの息子達、ヤンキーズJr.が何とかメアドをゲット出来ないかと、恋の駆け引きを繰り広げています。

実の姉だと思っている夕霧くんは、直接、玉子ちゃんと話す機会もあり、のほほんとしていますが、ヤンキーズJr.からメールの取り次ぎを頼まれて困っています。

光くんは相変わらず、玉子ちゃんの所にやって来ては、父親面をしてラブレターのガサ入れをしています。
「どれどれ?お、これは蛍くんから」
「アイツは兄弟の中でもモテるからなぁ、俺の次に。秘密主義だからどんなコトを書いているか知らなかったけど。ふんふん、いい年をして中々情熱的な」
「お、これは黒ひげ危機一髪からか。あの武骨な顔でどんなラブレターを書いているのかな??」
「ヤンキーズJr.からも来てるねー。アイツら、父親に似て中々のイケメンだからなぁ。俺ほどではないけど」

「玉子ちゃん、蛍くん、黒ひげには返信するようにね。ヤンキーズJr.は右近から上手くはぐらかしておいて。他は相手をよく選んで、然るべき相手には失礼のないようにね」とラブレターの返信に口を出すと、帰って行きました。

「あーあ、やっぱ玉子ちゃんを嫁に出すのもったいないかなぁ?」

【教訓】娘の恋愛に父親が口を出すのは、現代出番有り得ませんが、貴族の娘の結婚は100%政略結婚ですので、当然口を出します。
光くんは玉子ちゃんに対して、男女と親子の両方の愛情を抱いていますので、ラブレターのチェックを寝とられ的な感覚で嫉妬心と共に楽しんでます。
寝とられ性癖を満たす場合、パートナーの同意が重要ですよね。玉子ちゃんはそんな同意をしていないので、光くんの歪な愛情に苦しみます。
年が明けて、お正月になりました。
光くんは念入りに身繕いをしてから、奥様方の部屋を回ります。これこそ、ハーレムの醍醐味です。

まずは、紫ちゃん。「あけおめ〜。今日はいい天気だから、池の氷もとけたね。ほら、水鏡に美女とイケメンが映ってる」
「そうね、これからも一緒に居ようね」と仲良く歌など詠み交わします。

次に、明子ちゃん。早、8歳になりました。明美ちゃんから、「明けましておめでとう。すっかり大きくなったよね。明子ちゃんからの年賀状待ってるよ」とメールが来てました。
光くんは明子ちゃんに、このお返事は自分で書くようにと言いました。

里美ちゃんは最近、アデランス・イブに手を出した様です。光くんは30半ばと言っても若々しいのですが、里美ちゃんは年相応なので、最近はセックスレスになっています。里美ちゃんはすっかり母親業が板について、そう言う欲求も余り湧かない様です。

玉子ちゃんは六条屋敷で初めてのお正月です。光くんが年末に贈った山吹色の着物も良く似合ってます。「明子ちゃんのお琴教室をやってるから、時々参加したらいいよ」と女磨きをさりげなく奨めます。

明美ちゃんの所は屋敷の中でも、格別に優雅な雰囲気です。贈った白の着物も上品に着こなしてます。ついつい「明美ちゃん、姫初めしよっか?」と、光くんは泊まっていくことにしました。
とはいえ、紫ちゃんが気になる光くんは、日が昇る前に紫ちゃんの所に戻りましたが、また、焼きもちを焼いて、拗ねてしまってます。

数日後、二条の旧邸で暮らしている、空っちゃんと紅子ちゃんの所にも挨拶に行きます。

紅子ちゃんはボンビー生活の影響で、貧乏性が抜けず、取り柄だった豊かな黒髪も手入れが行き届かず、白滝のようになってしまっています。贈った着物の下が古びたインナーなのを見て、「服が足りないなら言いなよ」と言って追加でプレゼントしました。
光くんは「久々に古里に帰ったら珍しい花(鼻)を見た」と紅子ちゃんをからかいますが、紅子ちゃんは気づかなかった様です。

空っちゃんは出家してますので、仏教の修行をしながら静かに暮らしていました。さすがの光くんも甘いトークが出来ず、世間話をします。(紅子ちゃんもこのくらい話応えがあればなー)と思ってしまう光くんでした。

六条屋敷に戻って、若手官僚達が都中を行進するイベントがあるので、ハーレムの奥様方に集まってもらい、見物します。夕霧くんや、ヤンキー兄やん所の息子達も立派に着飾ってやって来ました。
奥様方が集まったのを見て、光くんは「今度、皆でセッションでもするか」と思い付いたのでした。

【教訓】紫ちゃんの独占欲が増して来たようです。明子ちゃんを引き取って、少し、明美ちゃんに対して気を使っていましたが、娘も夫も独占したいと元に戻りました。この嫉妬が生涯、紫ちゃんを苦しめます。里美ちゃんの様に生きられれば楽なのですが、なまじ美人に生まれて、世間知らずなだけにプライドを捨てられません。

玉子ちゃんの住まいは里美ちゃんのいる夏の町と決め、紫ちゃんに夕子ちゃんと玉子ちゃんのことを説明しました。紫ちゃんは「まあ、そんなこんな方がいたなんて、知りませんでしたわ。ホントに油断も隙もないんだから」

「昔の話だよ。でもね、本当に可愛い人だったんだ。紫ちゃんがもちろん一番だけど、生きていてくれたら、明美ちゃんより愛してたかもね」光くん、いつになく饒舌です。
「そんなこと言って。明美さん程、大切にはしないでしょうに」紫ちゃんは遠い昔に亡くなったライバルよりも、今のライバルの方が気になります。


里美ちゃんにも説明してお願いします。「里美ちゃん、面倒かけて悪いけど、夕霧に加えて玉子ちゃんもお願いね。何しろ田舎育ちだから、京都での暮らし方を教えてやって」
「へー、光さんにそんな人がいたなんてね~。夕霧くんがいるって言っても、ヒマだから大丈夫よ」里美ちゃんはあっさりしたもんです。


あれこれ準備しているとあっという間に10月。ようやく、玉子ちゃんを六条屋敷に迎えました。光くんは、親代わりと言う立場を活かして、直接ご対面です。


「長い間、行方が分からなくて心配してたんだ。会えて良かったよ。あなたのお母さんと過ごした日のことを思い出しちゃうね」
光くんは続けます。「ホントの親子でもこんなに長い間、会わないことなんてないよね。これから今までのことをゆっくり聞かせてね」


玉子ちゃん、光くんの美しさに圧倒されますが、「幼い頃に九州に下り、生きているかさえ、分からない様な有り様でしたわ」と恥ずかしそうにを伏せた様子は夕子ちゃんそっくりでした。
光くんは「辛かったね。これからは心配ないからね」と優しく微笑みました。


今日はこの辺で切り上げ、紫ちゃんの所に戻ってからも、「田舎育ちの割には、素晴らしい娘だったよ。玉子ちゃんのことを知れば、若い者達は黙っていれないだろうなー。ラブバトル・ロワイヤル in 六条屋敷開幕!Don't miss it!」と浮かれています。


「サイテー。それでも親代わりなの?」紫ちゃんは辛辣です。

「あー、紫ちゃんの時も、そうやって男達をからかえば良かった。惜しいことしたなー。何にも考えず、奥さんにしちゃった」ネンネの紫ちゃんを手込めにしたくせに何言ってんでしょうか、この男は?
「ホント、サイテー!」


話を聞いた夕霧くんも挨拶に来ました。「姉さんとは知らず、失礼しました。言って頂ければ引越のお手伝いもしたのですが」余りの真面目さに、姉というのが嘘なので、玉子ちゃん達は恐縮してしまいます。


年末になって、新年の準備にハーレムの奥様方に着物を配ることになりました。紫ちゃんはセンスがいいので、様々な所で、色とりどりの着物を作らせました。「私はお会いしたことないですから、光さんが見立ててあげてね」


「なーるほど、選んだ着物から、どんな様子か予想しようってこと?じゃあ、見てなよ」と光くんは、手始めに紫ちゃんと娘の明子ちゃんの着物を選ぶと、それぞれの着物を選んで、送り届けました。


奥様方からお礼のプレゼントがありましたが、紅子ちゃんからは、「ちっとも来てくれなくて寂しい」と恨みごとが書かれたメールが来ました。確かに、元々住んでいたボロ家から二条屋敷に引き取ったものの、全く会いに行ってないのだから当然です。
光くん、「ゴメンね、ゴメンね~」とテキトーなメールを返すのでした。


【教訓】光くん、見た目は若いのですが、考え方がすっかりオッサンになっています。
キレイな女の子を巡る若い者達のラブバトルを見物するのは、現代でも「あいのり」や「テラスハウス」で下衆心を刺激します。光くんは1000年前からその魅力に気づいていました。今なら敏腕プロデューサーになったことでしょう。

右近さんは玉子さんの乳母に夕子ちゃんの死の真相を伝え、自分が現在、光くんに仕えていること、玉子ちゃんをずっと探していたことを話しました。

長谷寺へのお参りの後、玉子ちゃんとも話をして、美しく気品のある様子に育ったことに安心しました。互いの連絡先を交換し、光くんに報告すべく、京都に帰りました。


光くんのハーレム、六条屋敷に帰ると、光くんが「あれ?何か良いことあった?若返って見えるよ?」とからかいます。流石、目ざとい。
右近さんは「大したことはありません。ちょっと懐かしい人に会いました。また、後で報告致します」とその場ははぐらかします。


その夜、光くんは足のマッサージに右近さんを指名します。「やっぱ、マッサージはベテランに限るね~。若いメイドはオジサンのこと避けてるし」と光くんは気持ち良さそうです。
「光様のマッサージを嫌がるメイドなんていませんよ。ただ、光様のセクハラが若い子には刺激が強すぎるんでしょう」右近さん、しれっと光くんの日頃の行状を嗜めます。


「で?誰と会ったって?」
右近さん、そばにいる紫ちゃんのことが気になります。
紫ちゃんは「ふぁ~あ。ねむ。話し声も聞こえなくなって来ちゃった」とわざとらしく、袖で耳をふさぎます。


右近さんも覚悟を決め、「夕子様の娘が見つかりました」と報告します。

「そうか、無事で良かった。で?夕子ちゃんみたいに美人か?」
「夕子様よりキレイな位でしたわ」
「とりあえず、ウチの娘として、ここに迎えるか。ヤンキー兄やんの所は娘も多いから、ほったらかしにされると可哀想だし。この六条院に美人の娘がいるとなったら、若い貴族達の恋の鞘当てが楽しめそうだし」光くん、35歳にしてすっかりオジサンになってゲスの極みの発想です。


【教訓】光くん、自宅のメイドさん達にセクハラ紛いの言動が見られるようです。足のマッサージの際に、「もうちょい上、そうそうう、もっと」と足の付け根まで誘導したり、通りすがりにお尻を撫でたりしてたんでしょうか?
セクハラは断じて許しません!ダメ!絶対。


でも、自分の家の中は許して欲しい様な...。