玉子ちゃんの住まいは里美ちゃんのいる夏の町と決め、紫ちゃんに夕子ちゃんと玉子ちゃんのことを説明しました。紫ちゃんは「まあ、そんなこんな方がいたなんて、知りませんでしたわ。ホントに油断も隙もないんだから」

「昔の話だよ。でもね、本当に可愛い人だったんだ。紫ちゃんがもちろん一番だけど、生きていてくれたら、明美ちゃんより愛してたかもね」光くん、いつになく饒舌です。
「そんなこと言って。明美さん程、大切にはしないでしょうに」紫ちゃんは遠い昔に亡くなったライバルよりも、今のライバルの方が気になります。


里美ちゃんにも説明してお願いします。「里美ちゃん、面倒かけて悪いけど、夕霧に加えて玉子ちゃんもお願いね。何しろ田舎育ちだから、京都での暮らし方を教えてやって」
「へー、光さんにそんな人がいたなんてね~。夕霧くんがいるって言っても、ヒマだから大丈夫よ」里美ちゃんはあっさりしたもんです。


あれこれ準備しているとあっという間に10月。ようやく、玉子ちゃんを六条屋敷に迎えました。光くんは、親代わりと言う立場を活かして、直接ご対面です。


「長い間、行方が分からなくて心配してたんだ。会えて良かったよ。あなたのお母さんと過ごした日のことを思い出しちゃうね」
光くんは続けます。「ホントの親子でもこんなに長い間、会わないことなんてないよね。これから今までのことをゆっくり聞かせてね」


玉子ちゃん、光くんの美しさに圧倒されますが、「幼い頃に九州に下り、生きているかさえ、分からない様な有り様でしたわ」と恥ずかしそうにを伏せた様子は夕子ちゃんそっくりでした。
光くんは「辛かったね。これからは心配ないからね」と優しく微笑みました。


今日はこの辺で切り上げ、紫ちゃんの所に戻ってからも、「田舎育ちの割には、素晴らしい娘だったよ。玉子ちゃんのことを知れば、若い者達は黙っていれないだろうなー。ラブバトル・ロワイヤル in 六条屋敷開幕!Don't miss it!」と浮かれています。


「サイテー。それでも親代わりなの?」紫ちゃんは辛辣です。

「あー、紫ちゃんの時も、そうやって男達をからかえば良かった。惜しいことしたなー。何にも考えず、奥さんにしちゃった」ネンネの紫ちゃんを手込めにしたくせに何言ってんでしょうか、この男は?
「ホント、サイテー!」


話を聞いた夕霧くんも挨拶に来ました。「姉さんとは知らず、失礼しました。言って頂ければ引越のお手伝いもしたのですが」余りの真面目さに、姉というのが嘘なので、玉子ちゃん達は恐縮してしまいます。


年末になって、新年の準備にハーレムの奥様方に着物を配ることになりました。紫ちゃんはセンスがいいので、様々な所で、色とりどりの着物を作らせました。「私はお会いしたことないですから、光さんが見立ててあげてね」


「なーるほど、選んだ着物から、どんな様子か予想しようってこと?じゃあ、見てなよ」と光くんは、手始めに紫ちゃんと娘の明子ちゃんの着物を選ぶと、それぞれの着物を選んで、送り届けました。


奥様方からお礼のプレゼントがありましたが、紅子ちゃんからは、「ちっとも来てくれなくて寂しい」と恨みごとが書かれたメールが来ました。確かに、元々住んでいたボロ家から二条屋敷に引き取ったものの、全く会いに行ってないのだから当然です。
光くん、「ゴメンね、ゴメンね~」とテキトーなメールを返すのでした。


【教訓】光くん、見た目は若いのですが、考え方がすっかりオッサンになっています。
キレイな女の子を巡る若い者達のラブバトルを見物するのは、現代でも「あいのり」や「テラスハウス」で下衆心を刺激します。光くんは1000年前からその魅力に気づいていました。今なら敏腕プロデューサーになったことでしょう。