ヤンキー兄やんは、ウワサの近江(ちかえ)ちゃんのことで、頭を痛めていました。引き取ったものの、未だに忘れられない心ならずも引き裂かれた悲恋の相手の娘(玉子ちゃんのこと)ではありませんでした。

世間では「娘を引き取ったけど、姫としての扱いもせず、雑に扱っている」とウワサされているのも腹が立ちます。ま、ウワサの元は身内なのですが...。

くさくさした気分のまま、これまた扱いに困っている雁乃ちゃんの部屋を訪ねると、真夏と言うこともあって、薄着にシフォンのローブをまとって、昼寝をしています。透けた素肌がセクシーです。
スヤスヤ寝ているので、扇をパチンと鳴らすと、起きた雁乃ちゃんと目が合いました。雁乃ちゃんが「いやん」と顔を赤らめる様子は(か、かわええ)と百戦錬磨のヤンキー兄やんも思わず、ゴクリと唾をのむ程でした。

「こら、メイドがそばにいないのに、油断してお昼寝しちゃダメだぞ。雁乃は可愛いんだから。とは言え、全く隙がないのも可愛げがないが...」
「雁乃を帝の妃にとも思ったけど、ダメだったね。でも、パパに考えがあるから、変な男に捕まっちゃいかんぞ」と、イマイチ何を言いたいのか分からないお説教をされた雁乃ちゃんでした。

「昔はたまにパパに会えると単純に嬉しかったけど、夕霧のことが好きだって気付いてからは、パパの顔を真っ直ぐ見れなくなっちゃった...」雁乃ちゃんは今も夕霧くんを忘れられずにいました。

さて、続けて近江ちゃんの部屋を覗いてみると、「小賽!小賽!(サイコロの小さい目のおまじない)」とカラカラとサイコロを振る音がします。馴染みのメイドとボードゲームをやっていました。

兄やんは「近江ちゃん、どないや?ここの暮らしは窮屈で大変やろ?」と声をかけます。
「そんなことないで。やっと父ちゃんに会えたんやもん。中々会えへんけど、毎日会えるなら、トイレ掃除でもやるで」と近江ちゃんは早口でまくし立てます。
「トイレ掃除はしなくていいが...、その早口は何とかならんの?」早口でベラベラ喋るのは、貴族に似つかわしくありません。
「これ生まれつきやねん。生まれる時の祈祷の坊主の早口が感染ったんやと母ちゃんも言うてました。でも、気ぃつけるわ」としおらしい一面も見せます。

「そうや、姉ちゃんの弘美が帰省しているから、そこで行儀見習いでもしたらどうや?」と兄やんが思い付きを口にすると、
「キャー、嬉しい!ええの?お妃様の所に遊びに行っても!水汲みでも何でもするわ」と興奮してまた、早口になってます。
「まあ、ええわ。しっかり教えてもろてきなはれ」とヤンキー兄やんは帰って行きました。

「はー、カッコええわぁ。あれが私の父ちゃんやねんで」と呟くと、
メイドが「でも、立派過ぎて疲れへん?ここまで身分が高くなくても、もうちょっと大事にしてくれる家の方がよかったんちゃう?」と言うと、
「何いうてけつかんねん。本来、あんたとは身分が違うねんで。これだから下々の者は」と知った風な口をききます。「ヘイヘイ」と適当に応じるメイドでした。

姉とは言え、帝の妃である弘美ちゃんの所に伺うには、家の中と言っても、事前にお手紙を書くと言う程度の知識は近江ちゃんにもありますので、頑張って書きました。

「すぐそばに住ませてもらってごぜえますが、今までごあいさつもしておられませんご無礼をお許し頂きたく。嫌われているかもと思うとヒビっちゃってますが、何卒、何卒よろしくお願いします」と言った具合です。

手紙を読んだ弘美ちゃんは、「これが今時の手紙なのかしら?流行りについていけないので、貴女が返事を書いてくれるかしら?」とメイドには丸投げです。

メイドも笑いながらも、「茨城にあると言う静岡の海の須磨の浦にお出で下さい。箱崎の松が待ってます」と返事を書き上げました。

弘美ちゃんは「困ったわ。私が書いたと思われたらどうしましょう?」と、丸投げしておいて、部下の仕事に文句をつけるよくある上司っぷりを発揮します。
「まさか?見る火とが見れば、わかりますよ」

「キャー、弘美様からお返事がきたわ!流石!素敵なお手紙!待ってるって」
...分かってませんでした。

【教訓】チラリズムは恋のスパイス。雁乃ちゃんのシフォンの生地から透ける素肌。夕霧くんが見たら興奮間違いなしです。
しゃがんだ女性の太ももの間の絶対領域、かがんだ胸元から覗くブラジャー、座った後ろ姿のジーンズから見えるショーツ。ドキドキします。
ただ、胸元からレーズンが見えたり、ジーンズからエクボがこんにちは!はチラリズムとは言えません。まあ、好きですけど。