リフレイン 透明な光 20 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

上げるの忘れてました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここの辺でしたよね。

貴方が転んだのは・・」

 

俺は、桜並木の道を

貴方と並んで歩きながら、

記憶にある場所で立ち止まった。

 

「はい、すっかりいい気分で踊っていたら、

そう、あの木の根っこにつまずいて」

 

成瀬さんが指さす先には

たしかに、遊歩道にははみ出すように

根っこがある。

 

「暗かったから

わからなかったのでしょうね」

「はい・・」

 

恥ずかしそうに俯く成瀬さん。

 

東郷法律事務所で

仕事をしているときの貴方とは、

まるで別人だ。

そう、あの夜この道で

楽しそうに踊っていた無邪気な姿と同じ・・・

 

「成瀬さんは、

どうして財前先生の財産の処理を

担当することになったのですか?」

 

俺はずっと聞きたかったことを

口にする。

財前教授は、

彼が自分の若い頃にそっくりなこと、

つまり智にそっくりなことを

彼には言ったのだろうか?

それによって、

俺は次の言葉を考えなくてはならない。

 

「東郷所長と、財前先生は大学の友人で、

とても仲が良かったです。」

 

彼は、自分が初めて財前教授と

会った夜のことを話してくれた。

 

俺はそれを聞いて驚く。

えっ・・・教授、何も言ってないのか?

 

「僕はそれから、先生の担当になりました。

先生がそう希望したのです。

こんな若造で、経験も浅い僕が

先生のような凄い人の担当になるなんて

信じられませんでした。

でも、先生は僕にとてもよくしてくれました。

美術館、音楽会、海辺の別荘と

僕をいろいろな場所に誘ってくれました。」

 

おいおい、教授、なんだって・・

俺との待遇の差が激しくないか・・

 

「でも僕が一番嬉しかったのは、

先生のご自宅で

手料理をごちそうになったことです。

先生は料理が得意でした。

とても美味しかった。

でも、でも、もうそれは叶わない・・・」

 

成瀬さんの目から

大粒の涙があふれて頬を濡らす。

俺は、思わず彼の肩を抱き寄せていた。

 

「うう・・・先生・・

どうして死んだの・・

僕をまた一人にして・・」

「成瀬さん・・」

「櫻井さん。

先生の亡くなった夜、

櫻井さんが一緒だったと聞きました。

先生はどうして事故になんか・・」

 

涙に濡れた目で俺を見つめる彼。

俺は、ぎゅっと奥歯を噛みしめた。

本当の事なんて、死んでも言えない。

墓場まで持っていくとき決めたんだ。

智にだって言ってない。

 

「伯父に、櫻井國比呂に写真を送ろうって

ホテルが開催している

有名な打ち上げ花火の写真を撮っていた。

見せたかったんだろうな伯父に。

危ないって思ったけど、

俺は止められなかった。

俺が目を離したすきに、

酔っていた教授は、バランスを崩して・・」

 

そこまで一気に話すと、

俺は成瀬さんを、そっとそばにベンチに座らせた。

 

「教授と伯父は恋人同士だったんだ。

でも、名門の財前家の跡取りと、

貧乏学生、誰もが反対した。

おまけに男だしね。

財前家に引き裂かれた二人が

ようやく再会した時には、

伯父はもう末期のがんで余命わずかだった。

 

教授は、伯父を連れて

行きたかったんだろうと思う。

もう時間がなかったから・・」

「櫻井さん・・・

ごめん・・なさい・・辛いこと聞いて」

 

成瀬さんが俺の手をぎゅっと握りしめながら、

涙声で謝る。

その姿が切なくて・・

成瀬さんは本当に

財前教授が好きだったんだと改めて思い知る。

俺を嫌った財前教授・・なのに、

智を始めその彼を慕う人がここにもいる。

 

財前五郎、伯父が愛した相手だけあるな。

悔しいけど、認めざるを得ないか・・・

 

「櫻井さん・・」

「あっ、すみません。」

 

どのくらい自分の世界に入っていたのか

すでに泣き止んで、

落ち着きを取り戻した成瀬さんが

俺をじっと見つめていた。