リフレイン 透明な光 18 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜の並木道、

月明かりの下で

踊りながら歩く男性に目を奪われた俺。

自分も歩いてみようと思い立ち、

散歩した道で、

俺の前で転んだ男性に手を差し伸べた。

サラサラの髪、

眼鏡の奥の切れ長の目、

驚いて開いた小さな口

ジーパンにTシャツの細い体。

 

智に似ている。

一瞬の間に認識して、

早くなる心臓の音。

 

家に帰ってからも、

さっきの人が頭の中から消えない。

また、会えたらと、願ったっけ・・

 

「成瀬さんだったのですね、

あの人は・・」

「櫻井さんにとっては、

桜の下で踊るただの変なやつにしか

見えなかったと思いますが、

僕は・・・」

 

そこで、成瀬さんが、口籠った。

そこで俺はすかさず告白する。

 

「俺は、あの時あった人に

もう一度会いたいと思っていました。

まさか、こんな近くにいたなんて・・

これも・・・」

「財前先生が

会わせてくれたのだと思います。」

 

智のおかげ、

と言いかけた俺の言葉よりも先に

成瀬さんが嬉しそうに言う。

財前教授のおかげ?どこでそうなるんだ?

しかし、不貞腐れている場合じゃない。

 

「こんな素敵な偶然をくれた神様に

感謝します。」

 

俺は腹の中に反論は仕舞って微笑んだ。

 

 

帰り道は楽しかった。

どうしてあそこで踊っていたのか分かった。

 

「僕の家は、

あの公園のむこうにあります。

駅の南口側です」

「そうか、

だからあったことがなかったのですね。

俺の家は公園の北側、

駅は北口だから。」

 

ついでに

あのひねくれ者の財前教授としりあった経緯を

聞きたかったけど、やめておいた。

 

きっと嫌味が口から洩れるはず・・

口調から

財前教授を

慕っているらしい彼に嫌われたくはない。

俺は話題を

あの公園に植えられている

沢山の花の咲く木々のことに替えて

花見酒はいいですよねと、

酒好きなことを彼に暴露し、

冗談半分の口調で飲みに誘った。

本当に一緒に行きたいんだけど・・・な。

まさか言えないよな・・・

そのうちに待ち合わせた駅前が見えてきた。

俺は、思い切って成瀬さんに言った。

せっかくの機会なんだ、まだ別れたくない・・

 

「もう少し話をしませんか、成瀬さん。」

「えっ?」

「も、もちろん、

この後何か予定があるようでしたら、

このまま帰り・・」

 

まだ早かったか?

驚く成瀬さんの顔を見て、

俺は焦りながら車を止めようとした。

 

「いえ、何も予定はありません。

僕を誘ってくれたのは

財前先生しかいませんでした。

だから、もう誰も誘ってくれないんです。

嬉しいです。

本当に。」

 

えっ・・なんで?

成瀬さんなら

いくらでも相手はいるだろうに・・・

智に似ているんだから。

 

「そ、それじゃあ、

あの公園を散歩しましょうか?

桜はもうないけど、

きっと月が綺麗に見えますよ。」

「そうですね。」

 

俺は、駅のロータリーに入ると

車の進行方向を

自分のマンションの方に向けた。