魔王87 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

カズ

 

 

 

 

 

えっ・・・・

サトが俺のことを恨んでいる?

 

サト・・俺はお前に何をした?

サト・・俺がしたことは

お前を苦しめただけだったのか?

 

 

俺は薄暗くなった道を、

とぼとぼと歩いていた。

いくら考えても、

サトがあんなに怒った理由が

わからなかった。

ついこの間まで、

俺と一緒に暮らしていたじゃないか。

だから、

あれはサトのドッキリで、

部屋のドアを開けたら

お帰りと、優しい声で

サトが迎えてくれるんじゃないかと、

あろうはずもない希望を抱いて

マンションの前に立つ。

しかし、灯りのついてない部屋の窓を、

外から見上げながら

 

「ふ・・ん・・・・な、わけねえよな。」

 

と、一人うなだれた。

 

 

 

 

「初めまして、大野智です。

よろしく。

サトでいいよ。」

 

んふふふ・・と笑う顔が可愛くて・・

穏やかで、優しくて、馬鹿で、お人好しで、

なのに、歌が上手くて、

信じられないほど、ダンスがキレキレで・・

 

デビューしたのに売れなくて、

仕事はドサ回りばかりだったし、

あいつらにイライラもしたけど、

サトがいつも空気を和ませてくれて。

俺はサトがいたから、

目的のために頑張れたんだ。

 

 

あの日までは・・

 

俺とサトが

準レギュラーで出演していた番組の

スポンサーが主催したパーティに出かけたサトが

嬉しそうに彼女ができたと

俺に報告してきたんだ。

まさか美人局の罠だとも知らず・・・

 

そのモデルのマリエという女に

頼まれるまま、金を貸すサト。

 

「サト、またかよ、

いい加減にしたほうがいいぞ。

我儘もほどがあるぜ。」

「でもさ、

イタリアのショーに出演するんだよ、

渡航するにもお金がかかるしさ

僕にできるのは、

それくらいしかないんだ。

有名なデザイナーに

知り合いにいないし・・

大丈夫、ちゃんと貯金してたから

お金はまだあるよ」

 

俺の忠告にも耳を貸さず、

相手を信じるサト。

だが、俺はおかしいと、

そいつを疑い始めていたんだ。

 

案の定、

喜多川事務所に入って14年。

一生懸命に貯めていた金

すべてをマリエに巻きあげられて

何もなくなったサトに

今度は俺の女に手をだした、

慰謝料を払えと芹沢から脅しが来たんだ。

サトは周りに必死に頼み込み、

要求された金を持って芹沢の家にいった。

俺が止めるのも聞かず・・・

 

俺の心配は現実になった。

それから3日間、サトは帰らなかった。

そして4日目の夜に戻ったサトは別人だった。

 

 

出かけた時とは違う

黒いシャツに黒いスキニー姿のサトは

能面のような顔で俺に言ったんだ。

 

「ぜ・・ぜったいにゆるさない・・

あいつら全員・・

地獄に堕ちればいいんだ・・・・

カズ助けて・・・ねえ

助けてよ・・・・・・」

 

普段聞いたこともない

呪詛のこもったセリフを吐きながら、

サトは玄関に崩れ落ちた。

シャツから覗く首筋に

赤い薔薇のような痕がいくつも見えて

俺は思わず目を背けた。

 

 

だから俺は・・

サトのためにこの手を汚したのに・・

サトの恨みを晴らしてやろうとしたのに・・・

 

「なんでだよ、サト

俺にわかるように説明してくれよ・・」

 

自分の部屋の窓に向かって呟きながら、

頭を抱えた俺は、

ふいに背後に気配を感じて振り返った。