魔王86 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

86

 

呆然と見送るだけしかできなかった。

どうしたら、

俺の気持ちをわかってくれるんだろう・・・

成瀬さん・・・

 

いくら考えてもわからない・・

そのうち鎮痛剤が効いてきたのか、

俺は意識を失った。

 

 

 

「櫻井さん、どうですか?」

「えっ・・・」

 

名前を呼ばれて、

はっとして目を開ける。

 

そこには

俺の点滴を外している看護師の姿。

そうだ、俺、救急外来に・・・・

 

「い、今何時ですか?」

 

鎮痛剤を買いに出ただけだったから、

腕時計はしていない。

財布と・・

あっ、スマホ・・があるか・・

 

俺が横の床頭台に置いてある電話に

手を伸ばそうとすると、

看護師が、先に教えてくれた。

 

「今、11時半ですよ。

帰れそうですか?

送ってきた方はどちらに?

とてもきれいな方ですね。」

 

看護師がうっとりとした目をする。

成瀬さん・・のこと。

 

「か、帰ります。

もう大丈夫です。」

 

俺は、看護師の問いには答えずに

ベッドから起き上がった。

腹の痛みは引いていて、

特に問題はなさそうだ。

 

「お世話になりました。」

 

俺はもうそれ以上

何も言いたくなかったから、

急いで処置室を出た。

 

 

 

 

 

 

「井ノ原さん、

説明してください。」

 

翌日の朝一番、

俺は喜多川事務所の応接室で

井ノ原さんと向き合っていた。

俺の見舞いにきた井ノ原さんが

必死に謝っていた理由はわかったが、

そこに至った経緯がわからない。

俺は説明を求めていた。

上司の室長にも、

事後処理は俺にと任されているんだ。

納得の行く説明と、

対応を聞くまでは帰らない。

 

「俺が悪かったんだ。

何も言わないで、

黙って

仕事をしてくれるのをいいことに

それに甘えて・・

サトには、きつい仕事場ばかりを

押し付けてきた。

嫌になって当然だ。

むしろ今まで耐えてくれてことに

感謝しなくてはならないくらいで・・・」

 

「はぁ?サト・・・」

 

サトの名前がでて、俺は驚く。

カズのしたことがバレてじゃない・

サトが辞めたいから解散する?

夕べ、成瀬さんが言っていたことが

本当だったとは。

俺は、今回の芹沢の件で色々あった彼が

口にした愚痴かと思っていた。

それほど、あの福岡のイベントでみせた

ダンスは素晴らしかったから。

好きじゃなきゃできないよ。

辞めるはずない・・・と。

 

「それが理由ですか?

彼が、サトが、

だから辞めると言ったのですか?」

 

驚きながらも何か釈然としない。

違う、絶対に違う・・

成瀬さんがサトだと聞いた俺には、

その理由は嘘だとしか思えない。

それにカズがよくそれを

納得したなと疑問が湧く。

 

「彼がいなくては、

ストームとしての活動は無理だ。

3人は自分でやれると

解散に同意しているが‥やつらは甘い・・」

「カズは・・?

カズはなんて言っているんですか?」

 

そうだろうな、

あの3人はいつも勝手にしていた。

自信があるのだろうが、

井ノ原さんがつぶやいたように、

舐めてるな、この世界を・・

いや、それよりもカズだ、

何時もサトに寄り添っていたカズ。

あいつはなんて言っているんだ?

 

「カズはしらない。

あいつに会ってない・・」

「えっ?」

 

井ノ原さんの疲れ果てた顔から、

掠れた声が漏れた。

俺の脳裏に、

いきなり俺を訪ねてきたカズの姿が浮かんだ。