リフレイン 透明な光15 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

その日僕は

少し確認したいことがあって、

財前家に電話をいれた。

財前先生の家には、

先生が台湾に渡航する少し前から

櫻井國比呂さんが同居していたから。

用事は財前家の屋敷内の

骨董品の鑑定のことだったから、

居住している人なら誰でもよかった。

 

「は・・い。」

 

電話に出た人物は、

櫻井國比呂さんとは、

全く似つかない声だった。

 

「財前五郎さんの

お宅でしょうか?」

「そう・・ですが・・」

 

訝しそうな声になる。

それは、そうだ、

財前五郎はもう亡くなっているんだから。

 

「あっ、怪しい者ではありません。

私は東郷法律事務所の

成瀬と言います。」

「な・・るせ?」

 

考えているような間が空く。

 

「財前教授の顧問弁護士です。

財前教授が亡くなったことは

承知しております。」

「な、なんの・・・ようじ・・」

 

片言で話す電話の相手・・

子供だったのか?

國比呂さんに代わってもらって、

早く用件を済ませてしまおう。

 

「申し訳ありませんが、

櫻井國比呂さんに

代わっていただけますか?

そちらのお屋敷のことで

確認したいことがありまして。」

 

用件を説明したのに、

代わって欲しいことも伝えたのに、

相手は電話の向こうで、

黙ったまま・・

 

「あの、お留守なのでしょうか?

それでしたら、

いらっしゃる日をおしえてくだされば、

かけなおします。

もし、もし・・」

 

ダメかな?

でも、この人はいったい

誰なんだろう?

櫻井さんのご親戚の方?

 

「こ、こ・・の家には・・

僕しか・・い・・ない」

「えっ・・」

「く・・國・・比呂・・さん

・・亡くなった」

「亡くなった?」

 

僕は息が止まるかと思った。

じゃあ、今僕と話をしている人は誰?

 

「い、いつですか?

ど、どうして亡くなったのですか?

貴方は、貴方はだれなんですか?」

 

僕の驚きが伝わったのだろう、

相手の人は、

優しい声になった。

 

「せ・・せつ・・めい・・し・・ます。」

 

電話の相手は、

大野智だと名乗った。

そして、病気で上手に話せなくて

ごめなさいと謝ると、

一生懸命、時間をかけて、

状況を説明してくれた。

それが彼にとってとても負担で、

疲れることが、

最後に彼が

苦しそうに咳込んだのが聞こえてわかった。

そんな彼なのに、

自分のせいで

僕の時間を無駄にしたことを再度謝ってきた。

 

僕は財前先生が

彼を可愛がっていた理由が分かった気がした。